入院中の子どもを付きっきりで看護する「付き添い入院」。その保護者を勇気づけようと障害のある子どもを育てる母親たちがクリスマスプレゼントを贈りました。
12月9日、富山市にある県立中央病院の小児病棟にサンタクロースがクリスマスプレゼントを持ってやって来ました。
プレゼントは病気で闘う子どもたちを支える親に向けてです。
クリスマスプレゼントを用意したのは障害のある子どもを育てる堀口里奈さん。
長男の銀汰君(5)は生まれつき染色体に異常があり、知能や筋肉の発達に遅れがあります。2年前まではチューブを通して直接胃に栄養を注入する医療的ケアが必要でした。
堀口さんは4年前、障害がある子どもを持つ家族同士をつなぐサークルを立ち上げ、これまでSNSでの発信や交流会、チャリティーイベントを行ってきました。また、医療的ケア児の地域ごとの現状を共有し、行政と連携を進めることを目的とした組織「全国医療的ケアライン」の富山県代表も務めています。
堀口さんがクリスマス前のこの時期に毎年行っていることがあります。
堀口里奈さん
「なかなかクリスマスをお家で迎えられなかった分、少しでも思いが伝わってくれたらいい」
プレゼントはすべて手作業で、「60セット一つ一つに思いを込めながら詰めています」と話します。
堀口さんは子どもの入院に付き添う親たちを励まそうと、4年前から県内の小児病棟へクリスマスプレゼントを届けています。
きっかけは銀汰君が感染症や手術のため何度も入退院を繰り返し、その度に付き添いで看病に当たってきたことでした。
堀口里奈さん
「私達親としても付き添いたいっていう気持ちはあるんですけれども、どうしても体力には限界があって。もう少しちょっと親の付き添いへの支援がいろんな面で拡充していけばいいのかなと思いますね」
子どもが入院した際に家族が病室に泊まり込んで看護をする「付き添い入院」。
子どものケアに追われて親が十分な食事や睡眠がとれず、家族が心身ともに疲弊するケースも多いとされています。
本来、食事や服薬の介助などは医療従事者が行い、保護者の付き添いは制度上任意になっていますが、病院側の多くが人手が足りない医療体制のため親に対し付き添いを要請しています。
富山県立中央病院新生児科 二谷武 医師
「富山県の総合病院でお子さんが病気になったときに、付き添いなしで入院できる施設はない。お子さんが一人ぼっちになると不安定になったり、泣いたり。そういうこともあって、幼児とか乳児に関して難しい現状がある」
1日中子どもに付きっ切りでケアする実態
また、子どものケアに費やした時間について「1日あたり21時間から24時間」が25.5%と最も多く、ほぼ1日中子どもに付きっ切りでケアしている親がいることも明らかになりました。
堀口里奈さん
「24時間ずっと付き添わなくちゃいけなくて、トイレもなかなか行けなかったり、シャワーも順番でタイミング逃すとその日は入れなかったりすることもある」
子どもから目を離せないため買い出しに行けないことも多く、院内のコンビニや売店で食料品を買う人が6割を占めたという調査結果も示されました。
中には1日3食が子どもの食べ残しだったという人もいました。
堀口里奈さん
「どうしてもちょっと野菜が食べたいっていうのが2、3日経過してくると体にあらわれてきて、どうしても自分自身も体調不良になりかけたこともあります」
プレゼントに手作りのメッセージカードも添えて
多機能型重症児デイサービス ユリシーズ 野上勝司 医師
「ご家族のみなさん大変なのは話を聞いて分かっていたので、少しでもお役に立てればなと。みんなでなにがいいかなって話し合って、せっかくなら役に立つものがいいなって今回はエコバッグにした」
堀口里奈さん
「一般の方々がこうやって応援してくださることに意味がある。みんな応援しているんだよっていう気持ちがこもった素敵なプレゼントだと思う」
12月9日、堀口さんたちが60人分のプレゼントを持って小児病棟を訪れました。
堀口さんと活動を共にしている女性も障害のある子どもを育てていて、これまで10回以上付き添い入院を経験しています。
障害のある子どもを育てる母親
「子どもの体調が良くならない限り仕事もいけないし、家のことも何も手つけられないっていう状況があるので、サポートを受けられるような会社にいたら、何とか歯食いしばってやれるかもしれないけれども、泣く泣く辞めざるを得なかったりするママもいるとは思うので、もうちょっと何か支援とか制度とかが広まっていけばいいかなと思ったりします」
プレゼントには保護者がゆっくり休めるようにと靴下やアイマスクなどに加え、ベビーラックやサーキュレーターなど入院中の親が希望しているものを堀口さんたちが選びました。手作りのメッセージカードも添えられています。
富山県立病院 石黒幸子 看護師長
「お子さんによってはすごく体が冷えたりとか、逆に暑かったりとか、こまめに調節も大変だと思いますし、少しでも過ごしやすくできたら過ごしやすくなる」
富山県立中央病院新生児科 二谷武 医師
「毎年温かい贈り物をいただいて本当に感謝してます。入院中のお母さんとか子供さんたちもとても喜ぶと思います」
病気と闘う子どもを支える親に少しでも笑顔で、ホッとする時間を感じてもらいたい。当事者だからこそ送ることができる心からのエールです。
堀口里奈さん
「プレゼントを通して1人じゃないよっていうことを感じていただけたら本当にそれが一番なのかなと思います。今生きてるということに感謝しながらみんなでクリスマスを迎えていただけたら嬉しく思います」
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