昨春、釧路支局に9年ぶりに戻った。あまり変わらない市中心部に肩の力が抜けた。だが、釧路湿原の周縁に立ち並ぶ太陽光発電のパネル群に、もやもやとした気持ちになった。

 湿原周辺は平坦で地価は安い。大半が市街化調整区域にあり、太陽光発電の規制は緩い。再生可能エネルギーは推進すべきだ。が、国立公園の目と鼻の先に広がるミスマッチな光景に違和感が消えない。

 太陽光発電と自然の共生を主題に、最近の全国の動きを追う連載記事の一部を担当した。「設置は違法ではないのに心外だ」と取材拒否されたこともあった。

 全国で約300の自治体が太陽光発電の規制条例を制定する。熊本県阿蘇地域では規制強化のため、環境省が「阿蘇くじゅう国立公園」の区域の拡張を検討。宮城県は今春、「再生可能エネルギー地域共生促進税」を導入した。自然環境に影響のない地域を非課税とし、乱開発に歯止めをかけるためだ。

 昨年、パネルの新規設置にガイドラインを設けた釧路市も条例制定に向けて動いていた。ただ、ガイドラインは市街化調整区域そのものの規制に踏み込めず、当初の条例案も同様だった。制定後、規制を強化したかったのだという。

 ところが10月下旬の市長選で前市長が敗れ、規制強化を公約に掲げた鶴間秀典氏(50)が初当選して一変した。市街化調整区域を含めた新たな条例案作りの検討が始まっている。

 先行する約300の条例も市街化調整区域の規制はごく一部にとどまる。現行法を上回る規制をかけるには、法的根拠が必要で、市の担当者は頭を悩ませている。条例案の提出は来年度になる見通しという。納得のいく答えが見いだせるのか。注視を続けたい。

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