世界で初めてヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から管の構造がある「ミニ腸」を作ったと、東京科学大のチームが10日発表した。これまでは大きさ数ミリの球体のものしかできなかったが、特殊な技術を使い、大きさ数センチの実際の腸のような構造を再現した。チームは、将来的に腸移植を代替できる技術に向けた一歩だとしている。
ミニ腸は、さまざまな組織に分化できるiPS細胞を培養して作った、実際の腸を模した細胞の塊で、腸オルガノイドとも呼ばれる。
チームはヒトのiPS細胞から、腸の元になる複数の細胞を作って融合させ、球体のミニ腸を作製。特殊な培養容器を使い、浮遊させて複数のミニ腸をひも状につなげ、回転させると、ひも状のミニ腸の中心に穴ができ、管のような構造ができた。
このミニ腸をマウスに移植したところ、マウスの小腸と同サイズのミニ腸まで成熟したという。ただ、実際の小腸と同じ機能があるかは確認できていない。チームは今後、小腸として機能するかどうかを確認する研究を行う。
難治性の病気で小腸を切除したり、生まれつき小腸が短かったりする患者は、国内に約1000人いるとされる。唯一の根治法は移植だが、小腸には複雑な免疫機能があり、他の臓器と比べて拒絶反応が起こりやすく、ドナー不足などの課題がある。
チームの水谷知裕講師と岡本隆一教授は「将来的に患者さんに役立つ再生医療の開発を目指したい」と話した。
成果は10日付の国際科学誌「セル・リポーツ・メソッズ」に掲載された。【中村好見】
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