安部公房は1924年生まれ、東京大学医学部を卒業後、作家としてデビュー、不条理な世界を描いた作品群が国内外で高く評価されてきましたが1993年、68歳で亡くなりました。

県立神奈川近代文学館では生誕100年に合わせた特別展が開かれていて、直筆の原稿や愛用品などおよそ500点の資料が展示されています。

このうち朝、目覚めると名前を失ったことに気付く男を描いた初期の名作「壁」は、直筆の原稿が初公開されています。

このときの執筆の苦労をつづったはがきもあわせて紹介され「書けば書くほど重い壁にはばまれて息がつまりそうです」などと記されています。

会場には、自宅に暗室を備えるほど写真の本格派だったという公房が使っていたたくさんのカメラや、みずから立ち上げた劇団で舞台音楽を作るのに使ったシンセサイザーなど生前の愛用品も多く並べられ、公房の多彩な活動ぶりに訪れた人たちが思いをはせていました。

県立神奈川近代文学館の秋元薫さんは、「孤高の作家といったイメージもありますが、手紙などからは公房の人間味も感じられます。現在で言うマルチクリエーターのような活動の様子などリアルタイムで知らない若い世代の方にも見てほしいです」と話していました。

展示会は県立神奈川近代文学館で8日まで開かれています。

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