イプシロンSの燃焼試験中の爆発について説明するJAXAの岡田匡史理事㊨と井元隆行プロジェクトマネージャ(5日、東京都千代田区)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史理事は5日、2024年度中に予定していた次世代小型ロケット「イプシロンS」の実証機の打ち上げが「現実的に不可能」との認識を示した。2段目エンジンの燃焼試験中に生じた爆発を受けて、開発計画を見直す。

5日に開いた記者会見で明らかにした。原因究明を進めながら、新たな打ち上げ時期を探るという。燃焼試験は11月26日、種子島宇宙センター(鹿児島県)で実施された。約2分間燃焼するはずだったが、点火約49秒後に爆発した。23年7月の能代ロケット実験場(秋田県)での試験に続いて2回目の失敗となり、JAXAは26日付で原因調査チームを設置した。大型基幹ロケット「H3」の開発責任者を務めた岡田理事がトップについた。

JAXAによると、1回目の失敗と同様に点火して約20秒後から、エンジンを覆う圧力容器の圧力が予測より上がる現象がみられた。試験時に撮影した画像からは、前回なかった現象として、エンジンの後方から燃焼ガスが漏れる様子が確認された。

前回の失敗はエンジン点火装置の一部の溶解が原因と結論づけ、この部品に断熱材を施す対策をしていた。今回は部品の溶解は見られなかった。

イプシロンSの開発責任者を務める井元隆行プロジェクトマネージャは「今回の失敗が1回目とは違う原因かは、まだわからない」と話した。今後の原因究明では、1回目で原因として除いた要因も改めて検討する考えだ。

種子島の試験設備では、扉の変形やエンジンを固定する器具が焼けるなどの損傷がみられた。能代ロケット実験場の設備も再建を目指している。

イプシロンSは、JAXAとIHIエアロスペースが開発した固体燃料ロケット「イプシロン」の改良機にあたる。2段目エンジンを大きくするなどして性能向上を図っている。改良前の最終号機となる6号機は22年10月の打ち上げに失敗し、ロケットに搭載していた人工衛星を喪失した。実証機はイプシロン7号機として、ベトナムの地球観測衛星を搭載して24年度中に打ち上げる計画だった。

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