群馬県の山本一太知事は4日の記者会見で、群馬、福島、栃木、新潟各県にまたがる尾瀬国立公園で観光客・登山者から「入域料」を徴収するため、環境省などと協議する方針を示した。湿原の木道の整備やミズバショウの保全資金などにあてるのが目的。入域料を巡っては、富士山の山梨県側も今年から通行料2000円の徴収を始めており、群馬県も実証実験を検討している。
県によると、尾瀬の環境保全にあてる今年度の事業費2億9000万円はすでに不足。総延長約65キロの木道は尾瀬の象徴の一つだが、資材はヘリと人力で運搬せざるを得ず、1キロあたり約20万円かかる。物価と人件費の高騰で、整備費も上昇傾向だ。さらに、湿原のミズバショウやニッコウキスゲ、希少なクロバナロウゲはシカの食害が深刻という。
山本知事は7月に尾瀬を訪れており、「他にないすばらしい自然だが、相当傷んだ木道やシカの食害跡、クマがミズバショウを食べた跡があった」と指摘。「至仏山にトイレがないのもあり得ない。自然公園として恥ずかしくない状態を保ちたい」と述べ、入域料の導入とともに、利用者の満足度の向上にも意欲を示した。
一方で、尾瀬の入山者数は減少。環境省関東地方環境事務所は4日、2024年シーズン(5~10月)が前年比7869人減の15万5630人で、過去4番目に少なかったと発表した。7~9月の週末に悪天候が多かったのが一因。ピークは1996年の約65万人で、木道が動けないほど混雑する時代もあったが、年々減少する傾向にあるという。
入域料の導入によって、入山客の減少に拍車がかかる懸念もある。現在はトイレのチップ代として任意で100円を徴収しているが、宇留賀敬一副知事は運搬費などの手数料が大きいとして、チップに替わる低額の入域料の導入を示唆。環境省や他県と協議し、別の入山口を持つ福島県とも足並みをそろえたい考えだ。【田所柳子】
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