詐欺罪に問われるおそれも 認識せず契約

首都圏に住む40代の女性は、ことしの秋、SNSで知り合った人物から、『期間限定の超お得な案件がある』として「スマホを新規契約するアルバイト」を持ちかけられました。

紹介された「担当者」とともに、複数の家電量販店を回り、自分名義でiPhoneの新機種など6台の新規契約を結んで担当者に渡しました。

1日で10数万円の報酬を得たということです。

しかし、契約したスマホを携帯電話会社に無断で譲り渡す行為は、携帯電話不正利用防止法で禁止されています。

店の中にも電話の新規契約を勧める闇バイトなどへの注意を呼びかける掲示があったことから、不安に感じた女性は「やめたい」と伝えました。

しかし担当者は、『ホワイト案件なので大丈夫』などと話し、契約を続けるよう促してきたということです。

女性は総額200万円にものぼる購入代金などの分割払いを続ける一方、受け取った報酬には現在まで手を付けず、弁護士や警察にも相談しているということですが、同行した担当者とは連絡が取れなくなっているということです。

女性は「やめたいと伝えましたが『やってもらわないと困る』などと言われ断れなかった。裏があることを想像しないといけないのに、安易に信じてしまい、後悔しています」と話していました。

警察は、他人に譲り渡す目的を隠してスマホを購入する行為は「詐欺罪」に問われる可能性もあり、譲り渡したスマホが高値で転売されたり、犯罪に悪用されたりするおそれがあるとして、絶対に勧誘に応じないよう呼びかけています。

高額報酬示され “ホワイト案件だから大丈夫”

今回NHKの取材に応じた首都圏の40代の女性。

闇バイトによる犯罪が連日報道される中で、「自分も犯罪に加担してしまったのでは」と不安を感じているということです。

SNSで以前からやりとりしていた人物から、「ホワイト案件だから大丈夫。うまくいけば報酬は20万円以上」などと勧誘を受け、最初は返答せずにいましたが、「きょう中に返事が欲しい」とせかされたため、安易な気持ちで引き受けてしまったと振り返ります。

「委任状を発行して名義変更できるので、支払いも発生しない」という相手の説明を信じて、1日で6台のスマホを契約しましたが、結局、書類は送られてこず、200万円にのぼる購入代金などの分割払いを続けているということです。

契約を結ぶ際に不安を感じ、「大丈夫なのか」と確認はしましたが、「大丈夫なんでやっちゃってください」などと促され、1台目の契約が問題なくできたことから、その後も続けてしまったということです。

女性は「不安になることをしたのは自分だし、自己責任だと思っています。断ろうと思えばできたはずなのに、『ホワイト案件だから大丈夫』ということばを信じてしまいました。安易に何も考えず、くだらないことをしたと後悔しています」と話していました。

携帯電話会社も注意喚起

報酬を目的にした不正なスマホの購入が相次いでいるとして、携帯電話各社も注意喚起などを行っています。

NTTドコモは、ホームページで「携帯電話を契約して端末を渡してくれれば高額なアルバイト代を支払うとか、料金を支払う必要はないので、名義を貸してほしいなどと甘い言葉で勧誘し、新規契約などを促す闇バイトにご注意下さい」と呼びかけています。

「報酬を受け取れないまま、携帯電話をだましとられ、契約者本人に料金や代金の債務が残るおそれもある」としています。

KDDIも、店舗にチラシなどを置いて顧客に注意喚起しているほか、店の窓口で適切な本人確認の徹底に取り組んでいるとしています。

契約後にもチェックを実施し、不自然な点がある場合は状況を確認して店にも指導をしたり、受付の運用を見直したりするなど適切な対応を講じているとしています。

ソフトバンクも、店舗での顧客への注意喚起のほか、販売店向けに契約の受け付けの際の注意事項の周知などを行っているとしています。

国民生活センター 契約した人から相談

一方、国民生活センターによりますと、勧誘を受け、スマホを契約してしまったという人からの相談も、複数寄せられているということです。

▽よいバイトがあると勧誘され、スマホを契約したが、発生しないと説明されていた利用料金を請求された、
▽SNSで知り合った相手とスマホを買いに行き、それを渡して現金を受け取ったが犯罪にあたるのか、などという相談があったということです。

国民生活センターは、「携帯電話の転売は違法なので、加担させられそうになってもきっぱり断ってほしい。よいアルバイトだと誘われてもうのみにはしないでほしい」と呼びかけています。

専門家 “背景に日本のスマホ価格の安さ”

いわば「闇バイト」としてスマホを不正に契約する行為が日本で相次いでいる背景について、通信業界に詳しい野村総合研究所の北俊一 パートナーは、「最新iPhoneの国際価格を比較すると、日本の価格水準はかなり安いほうだし、円安も重なっている。数万円の小遣いを渡すだけで新品のiPhoneが手に入り、海外に高く転売できるので利幅も大きくなっている。反社会的勢力が、組織的に行っているケースが多いと考えられる」と指摘しています。

そのうえで、「携帯電話は自分で使うために契約するものであり、国も、店から一歩外に出て、第三者に渡した時点で犯罪だという事実を広く伝えてこなかった反省がある。周知を強化していく必要があると思う」と話しています。

警察庁 “中高年も実行役の勧誘対象に”

警察庁によりますとスマートフォンなどを不正に契約し、それらが何らかの犯罪に使用されるなどして検挙された人はことし10月末までに126人に上り、去年の同じ時期に比べ4人増えています。

強盗などの事件に「実行役」として加担する「闇バイト」は、10代から20代の若者が多くなっていますが、中高年もスマホや銀行口座といった犯罪を容易にする「道具の準備役」などとして勧誘のターゲットになっているということです。

スマホやSNSは年齢を問わず普及していて、中高年が被害者になるだけでなく、犯罪に加担してしまうリスクも高まっているとして、注意を呼びかけています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。