公益通報者保護制度の見直しを議論する消費者庁の有識者検討会は4日、年内の報告書取りまとめに向け、法改正する上での論点を整理した。企業から解雇といった不利益な取り扱いを受けた内部通報者が訴訟を起こした際、通報と処分の因果関係についての立証責任を事業者側に負わせる案などが示された。通報者の保護や負担軽減を図る狙い。

現在は通報者が地位の回復を求めて訴訟を起こす場合「不利益な取り扱いが公益通報を理由として行われたこと」を通報者自身が立証する必要がある。情報や証拠資料が事業者側に偏っていることなどから「通報者の立証負担を軽減するべきだ」との意見がこれまでの検討会で出ていた。

一方で、職務内容に応じて賃金を決める「ジョブ型」を採用している企業が多い海外と異なり「日本では配置転換が経営活動の中で頻繁にある」との声が主に経済界から上がっていた。

4日の検討会では不利益な取り扱いのうち解雇と懲戒処分に限って立証の責任を事業者側が負う案が議論された。「長期間がたってからの人事上の措置は通報以外の理由である可能性が高い」などの意見を踏まえ、事業者側が立証責任を負うのは「通報から1年以内の解雇・懲戒処分」などと期間を制限する案も示された。

不利益処分をした個人や事業者に対して刑事罰を導入する案についても議論された。委員から「大企業の不祥事が相次ぎ、企業が自浄作用を発揮する必要性は高まっている」(山口利昭弁護士)といった声があった。座長を務める東大大学院の山本隆司教授は「(政府には)早急に法改正して頂きたい」とコメントした。

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