広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」で被曝(ひばく)した被害者救済のため2022年に始まった新たな認定基準の下、岡山県に被爆者健康手帳を申請して却下されたとして岡山市の女性(83)が29日、県に処分取り消しなどを求め岡山地裁に提訴した。
厚生労働省によると、21年の広島高裁判決を受けた新基準下での訴訟は、広島県以外では全国初。
21年7月の高裁判決は、国が主張する降雨域よりも広範囲に黒い雨が降ったと判断し、救済拡大を命令。判決確定を受け厚労省は22年①黒い雨を浴びたか、その可能性を否定できない②がんなど11種類の疾病のいずれかにかかっているか、白内障の手術歴がある――の要件をいずれも満たした人を被爆者と認め、手帳を交付する運用を始めた。
代理人弁護士や訴状によると、女性は4歳の時に広島県内の自宅近くで黒い雨を浴び、対象疾病の肝炎を患っている。今年3月、岡山県に手帳交付を申請したが、7月に「当時いた場所に雨が降ったことが確認できない」として却下された。自宅は新基準で追加された降雨域の外側にあったが、女性は雨を浴びたことを鮮明に記憶しており、認められるべきだとしている。
提訴後に弁護士が岡山市内で記者会見し「申請を却下され、記憶を否定されたようでショックだった。私の裁判で、申請を諦めている人に勇気を与え、核兵器がなくなることを願う」とする女性の手紙を代読した。
県福祉企画課は住民票などの客観的な資料で審査していると説明。これに対し弁護士は「約80年前の物的証拠を求めるのは理不尽。供述の信用性があることで救済を認めた高裁判決を尊重するべきだ」と話した。
新基準を巡っては、広島で手帳交付を却下された複数の住民が処分取り消しを求めて集団提訴している。〔共同〕
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