「しろうたカフェ」。名前の通り、城と歌が好きな人たちが集う飲食店だ。「城ブーム」を背景に、店主の小林隆一さん(52)が2022年、東京都福生(ふっさ)市にオープン。音楽ライブの傍らで、城にちなんだメニューを考案し、城郭の研究者や城好きの著名人を招いてイベントを開いている。

「しろうたカフェ」店主の小林隆一さん=東京都福生市で

◆店主は1500カ所以上の城を訪問

 テラス席に、上杉謙信や真田幸村ののぼりがはためく。JR青梅線牛浜駅近くのカフェに入ると、城の写真が並んでいた。

テラス席に戦国武将ののぼりがはためく=福生市で

 「石垣のない関東の土の城ばかり展示していたんですが、お客さんが『ただの山道?』という顔をしていたので、天守閣のある有名な城に替えました」と笑う小林さん。ただ、「石垣を用いずに、土を駆使して複雑な縄張り(設計)にしているところが関東の城の魅力」と、こだわりものぞかせる。  「都内のお薦めは?」と聞くと、店の近くにある今井城(青梅市)という。住宅街に土塁や空堀が残る市の指定史跡。誰もが知っている江戸城ではなく、あくまで「土の城」を挙げた。  そんな小林さんは「豊臣秀吉の兵糧攻めで知られる三木城(兵庫県三木市)のふもとで育ち、城は格好の遊び場でした」。城巡りにはまり、1500カ所以上を訪ねた。会社員として働きながら作曲やバンド活動もする中、同志が集える場所をつくりたいと思うようになったという。

◆ホットドッグに旗印を入れるサービスも

(右手前から時計回りに)武将の旗印があしらわれたツインドッグ、山中城ハニーワッフル、算木積みポテト、殿様コーヒー、戦国プリン=福生市で

ワッフルに似ているという山中城の障子堀=静岡県三島市で、本社ヘリ「あさづる」から

 カフェで提供するホットコーヒーは3種類あり、値段が高い方から「殿様」「家老」「お手軽足軽」。城好きのプロレスラー藤波辰爾さんのネーミングだ。家老は足軽よりいい豆を15グラム使用、殿様は20グラム使う。人気のデザート「山中城ハニーワッフル」は、静岡県三島市にある山中城の「障子堀」がワッフルに似ていることから考案した。  目玉メニュー「ツインドッグ」はケチャップやマスタードで戦国武将の家紋などを入れるサービスがあり、石田三成の旗印「大一大万大吉」が人気。食材は地元産を取り入れ、ソーセージは福生市の「大多摩ハム」と「福生ハム」、バンズは羽村市の「寿屋ベーカリー」から調達している。

◆専門家のイベントや情報交換会を開催

城と歌が好きな人が集う「しろうたカフェ」(2階)=福生市で

 これまでに、城郭研究で知られる中井均・滋賀県立大名誉教授や城郭ライター萩原さちこさんらを招いたイベントを開催。参加者が好きな城の魅力を発表する「推し城!」も行った。

「城攻め!男塾」と題した情報交換会で意見を交わす参加者たち=福生市で

 取材した6月上旬には「城攻め!男塾」と題した情報交換会があった。参加者で日本城郭検定1級の兵(つわもの)・杉山智幸さん(48)が「(群馬県の)名胡桃(なぐるみ)、沼田、岩櫃(いわびつ)城を車を使わず回りました」と話すと、主催した埼玉県の三輪誠人(まこと)さん(55)が「漢(おとこ)ですね!」とたたえるなど丁々発止の「激闘」が続いた。小林さんは「カフェをイベントの場として使ってもらい、交流を広げたい」と願う。

 しろうたカフェ 福生市牛浜158、原則正午~午後9時、不定休。6月30日にテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」の初代オープニング曲「ゆめいっぱい」を歌った有馬ゆみこさんのライブ、7月1~21日に「桜の城」をテーマとした写真展を予定。いずれも詳細は「しろうたカフェ」のホームページ参照。問い合わせは電090・6000・3908へ。

 文と写真・須藤英治  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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