期待された超進学校受験では「ことごとく不合格」に
東大から東大院を修了するほどの才女。インタビュー時には、ロジカルなコメント力に感嘆するほど、地頭のよさが伝わってきた。
しかし本人は、超名門校出身の家族に囲まれた環境で、唯一の「落ちこぼれ」だったと自称する。
家族は軒並み、超名門校出身者ばかり。一人娘の雲丹も同じく、将来を期待されてきたのは想像にたやすい。
しかし、中学受験では“女子御三家”を受験したものの「不合格」となってしまった。
その後、東大出身者を多く輩出してきた、茨城県の江戸川学園取手中・高等学校に進学するも「両親には『すみません……』みたいな。東大合格までは、友だちに『私の親、頭がいいんだよ』と、家族を自慢することしかできなかった」と振り返る。
教育熱心な両親に厳しく育てられ、小学3年生からは名門中学校への合格を目指して、塾通いがはじまった。
平日は毎日、放課後に「親の車」での送り迎えがあり、自宅へ帰ってからも「ちょっと勉強して、ご飯を食べて寝る毎日でした」と明かす。
「ガラケーのロック解除」に奮闘するものの…
中学から高校にかけては、環境がほんの少しやわらぐ。
進学校である江戸川学園取手中・高等学校への入学後は、塾には通わず「東大合格」を目指すカリキュラムを組んでいた、学校の勉強に専念。
門限の20時頃までに帰宅すれば、友だちと遊ぶのも許された。
中学から高校にかけては、学校の先輩に教わった「16時間勉強法」を参考に猛勉強していた(写真:梅谷秀司)しかし、両親による愛情は深く、甘やかされることのない状況も続く。
東大合格までは、友だちがスマートフォンを持っていた環境で、自分だけは「防犯用に」と渡されたガラケーを使用。ケータイには、両親が決めた暗証番号のロックがかかっていた。
どうしても、友だちと連絡したい。
暗証番号を「0000」から順番に入力して、ロック解除を試みたこともある。
偶然「解除できてコッソリ、友だちにメールしたこともありました。でも、そんなときに限って親が部屋へ入ってきたり、後日、怒られたりして。勘の鋭い親だなぁ、と思っていました」と、あっけらかんと打ち明ける。
高校時代には、貯めたお小遣いで「iPod touch」も購入。
しかし、自室で「布団をかぶって、iPod touchでネットを見ていたらバレちゃって。『見せなさい!』と怒られて、買ってからわずか2日で没収されました」と笑う。
東大合格を目標としたのは、中高一貫校である江戸川学園取手中学校への入学後。中学から高校にかけての6年間、両親に厳しく育てられる環境で勉強に打ち込んできた。
しかし、努力は実らず、初めての東大受験は「不合格」に終わった。自分より、結果を聞いた両親が「すごくガッカリして、リビングの空気が重かった」と振り返る。
併願の防衛医科大には合格したが、喜べなかった理由
東大受験ともなると、早稲田大学や慶應義塾大学といった名門私立の“滑り止め”を受けなかったのかは気になる。
しかし、当時は「受かるし、いいっしょ!」との余裕から「受験しなかった」という。
それでも、公立の併願では防衛医科大学校に合格した。
ただ「親に縛られる生活を続けてきて、今度は国に縛られるのはちょっと……」との理由で浪人を決意。幼少期から、両親に厳しく育てられてきた雲丹ならではの選択肢だ。
1浪時代は1日のうち「12時間ほど」勉強。
合格まで「休みが1週間あったかなかったか」と振り返る1年を経て、無事に東大理科二類に合格した。
東大合格とともにスマホを購入。ガラケー生活から脱して「ようやく文明に追いついた」とポツリ(写真:梅谷秀司)東大では、1〜2年生の成績を加味して、3年生以降の所属学部を学生自身が選択できる“進学振り分け制度”がある。
3年生で雲丹が選択したのは、理学部生物学科。
当初は「iPS細胞のような、人体の研究」に興味があったため「医学部」も視野に入れていたが、成績からして「ムリ」と判断。
せめて「動物の研究を」として、進んだ学部ではカエル、ネズミなどを相手に「遺伝子工学」を学んだ。
そして大学では、2年生でアイドルとの出会いも。
今、アイドルグループ「Mirror,Mirror」で活躍する雲丹の「転機」であり「原点」だ。
小学校から高校まで、部活に入っていなかった反動で…
小学校から高校にかけて、部活に入っていなかった反動か、ふと「クラス以外の団体生活を経験しないとヤバい」と危機感が募った。
ただ、体育会系のサークルは「運動が苦手」でムリ。
迷った末に「かわいいモノ、かわいい女の子が好きだし、かわいいダンスなら練習すればできるかも」と考えて選んだのが、有名アイドルのコピーダンスサークルだった。
慣れないダンスの大変さはありつつ「ひとつのステージを複数人で作り上げるこの感覚を、みんなは青春時代の部活で経験していたんだ」と痛感。
まるで、青春時代を取り戻すかのように。
年に2度ある文化祭(五月祭・駒場祭)、大学対抗女子大生アイドルコピーダンス日本一決定戦「UNIDOL」の計「年4回」のステージに向けて、仲間とともにレッスンへと励み、汗を流す喜びを思う存分に味わった。
東大でのキャンパスライフでは「自由」を手に入れた。
大学卒業後は、東大大学院農学生命科学研究科へと進学。就職活動をしなかったのは「社会人になりたくない」と思ったから、いわゆる“モラトリアム”だ。
大学4年生で、かつて世話になった高校時代の恩師を訪ねた際に「大学卒業後の進路」を相談。
恩師の「せっかく東大の理系学部に入学できたんだし、大学院へ進んでみれば。社会人になってしまったら、大学院には進学しづらくなるよ」との言葉が、背中を押した。
親元を離れるために「就職して、行方をくらますか…」
大学院では、関心が「動物」から「植物」へと移った。ただ、「遺伝子工学」と取り扱う分野は変わらず。2年間の研究生活を経て、2022年3月に修了して“修士”の学位を得た。
当時、すでに“プロのアイドル”としてステージデビューも果たしていたという。その流れは、やや複雑だ。
(2022年3月29日/@MM____uni/雲丹うに【Mirror,Mirror】5.20 新宿BLAZEワンマン)アイドル“雲丹うに”として活躍する現在の所属グループ「Mirror, Mirror」が結成されたのは、2021年夏頃。
大学院の修了直前、2022年1月にグループは初ステージを迎えていた。
さらにさかのぼって、2021年秋。雲丹は、大学院の新卒として「秋採用」の就職活動もしていたとは驚く。
本音では就職したくなかった。しかし、厳しい両親のもとでは「アイドルになった」とは言えない。
そんなある日、実家では史上初の家族会議が開かれて「あんた、就職どうするの?」と聞かれた。
返す言葉もなく、内心で「いったん就職して、行方をくらますか……」と自問自答。
早く就職活動を終わらせようとして「東大院卒の肩書が重宝されそうな有名企業」に絞って「3社ほど」にエントリーした結果、大手銀行の内定を得た。
いわば、アイドルへの理解が薄かったであろう両親への「カモフラージュ」のために、大学院修了後の2022年4〜7月の約4カ月間だけは、銀行員とアイドルを兼業。
両親に内緒で退職手続きを進め、実家では一言「辞めるから」と結果だけを伝えた。
ツインテールもトレードマーク。ステージでの立ち姿はさながら“ヒロイン”のよう(写真:カネコシュウヘイ)退職後は銀行のボーナスも含めた貯金を使い、念願の一人暮らしもスタート。本人の願いどおり、親元から離れたのち、専業アイドルとしてステージに立ち続けている。
アイドルは「向いている」と自信満々。
人を「褒めるのが得意」と自称する雲丹は「ファンの方々に直接『うれしい』『好きだよ』と伝えられる仕事は天職」と笑う。
今、力をそそぐグループ「Mirror, Mirror」でいつか「日本武道館のような大きなステージ」へ立つために。
「より上を目指したい」と語る表情には、覚悟があらわれていた。
*この記事の続き:「東大→東大院修了」高学歴アイドル悩む"肩書の葛藤"
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