絶滅危惧種として『環境省レッドリスト』に記載されているアカウミガメ。全国有数の産卵地である高知県の高知海岸でも、産卵回数は年々減少しています。そんなウミガメを守ろうと奮闘する学生たちの活動を取材しました。

後ろ脚でひとかきひとかき力を込めて穴を掘り、新たな命を生み出す。そんな人々の胸を打つ光景が見られなくなるかもしれません。

日本で産卵するアカウミガメは絶滅危惧種として『環境省レッドリスト』に記載されています。絶滅が危惧されるようになった理由ははっきりとはわかっていませんが、さまざまな人間の活動が影響しているといわれています。

全国有数の産卵地である高知海岸でも、産卵回数は10年前の15分の1程度まで減少しています。

そんな厳しい環境におかれているウミガメを守ろうと、奮闘する若者たちがいます。高知大学のサークル=かめイズムです。

主に5月のはじめから8月末にかけて、どのような場所や環境が産卵に適しているか明らかにするための調査を週に3回行っています。

(かめイズム 代表 水本悠斗(みずもと・ゆうと)さん)
「4時半に大学に集合・出発して、ここに来て調査している。時間が経てば経つほど、足跡が少し薄くなるので、できるだけウミガメが生んですぐ調査できるように、朝早い時間に調査している」

調査するのは、高知県高知市長浜から土佐市新居(にい)にかけての高知海岸、およそ10キロ。この日は、およそ1.5キロの砂浜を歩きながらウミガメが上陸した跡を探します。

(かめイズム 代表 水本悠斗さん)
「こういうふうに、ウミガメの足跡ができる。足跡があったら、みんなでその場所に行って、そこで産卵があるかないか調査やデータ取りをしていく」

手分けして探しても簡単には見つかりませんが、メンバーのモチベーションに影響はありません。

(かめイズムのメンバー)
「はじめの方はしんどかったが、だんだん慣れてしまって、朝起きるのが苦ではなくなってきた。今年初めて産卵に巡り合えて、『こんな感じで生んでいるんだ!』という驚きと感動がすごかった」

(かめイズムのメンバー)
「ウミガメ好きの方が勝っているので、そんなに苦になっていないかな。(大事なのは)ウミガメ保全の気持ち。小さいころに、ウミガメの赤ちゃんが海に向かう姿をテレビなどで見て、今も印象に残っていて、そういうのもモチベーションだと思っている」

探すこと30分。結局この日は、見つけることができませんでした。

(かめイズム 代表 水本悠斗さん)
「こういう日の方が正直多い。少し気持ちはダウンしてしまうが、持続的に調査することによって、足跡を見つけて、その分ウミガメを保護できたり、保護のために必要な研究を進めたりできるので、ない日が多くても、やる意味を感じる」

後日、水本さんから「高知海岸で卵が見つかった」と連絡がありました。案内してもらうと…。

(かめイズム 代表 水本悠斗(みずもと・ゆうと)さん)
「こちらが7月20日に高知海岸で見つかったウミガメの卵で、ウミガメが出てきているのが、きょう、ふ化した卵」

見つけたのは、メンバーと親交が深い高知大学の院生たちです。より専門的にウミガメの研究を行っていて、卵を保護したり、特別な許可を得て一部を研究対象としてセンターに連れてきたりすることもあります。水本さんもウミガメがふ化する姿を見たのは、初めてだそうで…。

(かめイズム 代表 水本悠斗さん)
「かわいらしいなと思う。貴重な体験をさせてもらっている」

さらに、元気に泳ぐ子ガメの姿も見せてもらいました。

Q.このあとはどうする?
(かめイズム 代表 水本悠斗(みずもと・ゆうと)さん)
「ある程度成長したあと、海に帰す。ウミガメが頑張って生まれてきたことを考えると、自分もこれから大学での勉強や研究、生活など頑張っていきたいなと思う」

高知県内では、ウミガメを保護しようという動きが加速していて、2023年5月には、専門家らが情報共有を行う「高知海岸ウミガメ協議会」が発足しました。

かめイズムもメンバーの一員として、得られた調査結果をもとに、県や全国の学会に向けた報告・発表や、県内の子どもたちへの出前授業などを通して「ウミガメを守りたい」という思いを発信しています。

若い人たちが、環境問題を自分たちの課題としてとらえて取り組む姿に、ウミガメの専門家で、かめイズムの顧問でもある高知大学の斉藤教授は、『存在そのものが稀有だ』と話します。

(高知大学 総合研究センター 斉藤知己 教授)
「若い人がエネルギーを思い切りぶつけてくる方が、インパクトがありますよね。自然や生物に対する意識・愛着・愛情、気持ちをどんどん周りの人に波及させて、日本や世界での自然保護の機運を高めるのに、寄与してもらえたら」

(かめイズム 代表 水本悠斗(みずもと・ゆうと)さん)
「アカウミガメが産卵してくれる場所は、砂浜の状況などによって限られてくるので、高知海岸を選んでくれてありがとうと思う。なぜウミガメの数が減っているのかに関する話などをいろんな人に伝えることで、ウミガメに関する活動などに積極的に協力しないといけないなと思ってもらえたら嬉しい」

ウミガメがやってくる海岸を未来に残していくために…。かめイズムの調査はこれからも続きます。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。