福島県内で長く愛されている老舗の今に迫る「老舗物語」。今回は300年以上続く伝統工芸品作りに注目します。伝統を守り新たな取り組みに挑戦するある男性の物語です。
子宝・安産・子育ての御守りとしてご利益があるとされる『三春駒(みはるごま)』。また、家内安全を願う、かわいらしい干支が描かれた『三春張子(はりこ)』。これらの伝統工芸品は江戸時代から300年以上受け継がれてきました。
郡山市西田町。自然に囲まれた集落にある『高柴デコ屋敷』。4軒の工房でその伝統を今も守り続けています。
4軒ある工房のひとつ『本家 大黒屋』。その21代目当主、橋本彰一さん。代を受け継いで20年以上になります。橋本さんは、張子の伝統を守り後世に引き継ぐための取り組みを積極的に行ってきました。
築140年の古民家をカフェにすることで、訪れた観光客がゆったりと過ごせる空間を提供したり。
また、そこでも伝統に触れてもらおうと『絵付け体験』も。
--小学6年生「難しかったけど、楽しかったです。」
--お客さん「職人たちの技をみながら(親子で体験ができて)良い時間だと思います。」
300年以上歴史のある張子。その製法は当時から変わらず受け継がれています。
--橋本さん「大事なものは『型』が必要なんです。伝統的な型は木型を使っています。その木型に和紙を貼って形ができるんです。」
手作業で和紙を貼り、十分に乾燥させ木型を取り出します。
--橋本さん「例えばここにだるまの木型があります。乾燥させたあと切り目を入れて張子を抜きます。切れ目のあとが(木型に)残る。こういうところが刃物を使って切れ目を入れてる痕跡になるんです。」
長年使っていると鼻の部分が欠けてしまったり、また、切れ目を入れる際にどうしても木型自体を傷つけていまい、いずれは使えなってしまいます。そこで橋本さんは伝統に独自のアイデアをプラス。それが・・・。
--橋本さん「3Dプリンターでプリントした型も併用して使っています。昔の木型をデータ化して使っているんです。」
伝統と3Dプリンターという現代技術を組み合わせてしまったのです。
ハイテクな技術を使い、壊れにくいプラスチックで型を作っています。
--橋本さん「作っていて私も楽しいし、お客様にとっても、こんなかわいいものを張子で作れるの?今までに無かったこんな張り子が作れるんだね、というようなものが今までの伝統を糧に作れたりするんですよね。」
今までは難しかった細かなデザインも制作できるようになり、幅も広がりました。
--橋本さん「また伝統的な木型をデータ化しておくのも、万が一消失した場合でも、データを持っていると同じ物が作れるメリットがある。」
古き良き伝統を後世に残したいという気持ちもこのアイデアには込められているのです。
--橋本さん「伝統は守るだけじゃなく、自分でつくっていくスタンスで考えているので、技術・素材を取り入れることは、お客さんにアプローチすれば理解も深まると。」
新たな技術との出会い、またそれを使っていい作品ができていることで自信となり、さらにこれからの張子作りに期待が膨らんでいます。
--橋本さん「今までの張子は飾り物、お土産物、縁起物として楽しんでいただいていたんですけど、今後は、例えば張子に香りがついていたり、音が鳴ったり、動き出すものがあったり、身につけるものがあったり・・・。まだ模索中なんですけど、食べられる張子も作れたらいいなと思っているので300年後、大黒屋では私の想像を絶するような画期的な張子が作られているのではないかと思います。」
『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年7月4日放送回より)
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