広島県三原市に伝わる県無形民俗文化財「御調八幡宮の花おどり」が9年ぶりに復活しました。伝統文化の継承に向けた町内会などの取り組みを取材しました。

三原市八幡町の御調八幡宮に鉦(かね)や太鼓の音が響きます。この踊りを総じて、「花おどり」と呼びます。江戸時代から御調八幡宮に奉納していたとされ、もとは「雨乞い踊り」だったといいます。

高齢化や世帯数の減少などで人が集まりにくいこともあり、毎年の開催はできていませんでした。今回は2015年以来となる、9年ぶりの開催です。

「花おどり」を復活させ町内会を盛り上げようという声を受け、八幡町内会長の 藤田善久 さんが中心となって地域に声をかけていったのです。町内会長就任1年目だった2023年5月に実施する方向でまとまりました。

藤田善久 さん
「後世に残していかなきゃいけない踊り。特にそこを考えております。われわれの代だけじゃなくて、20年~30年先、もっと先までこの踊りを残したい」

本番を1週間後に控えた4月6日、地元の公会堂で踊りの練習が行われました。日が暮れ、続々と住民たちが集まってきました。今回は総勢70人で踊ります。5種類の踊りを通しで行う練習が始まります。

大人と大人の間には子どもたちの姿も…。小学生を中心に16人が踊りに参加しています。踊りの練習はことし2月から。月に3回程度、練習をしてきたといいます。

子ども
「すごく緊張してて、練習通りに踊れたらいいかなって思っています」

参加者
「やっぱり、それは存続していきたいという気持ちで、今回も思いましたね」

参加者
「太鼓の次が鉦ね。で、後、踊り」

4月14日、本番の日を迎えました。甲冑姿なども見え、まるで時代行列のようです。

御調八幡宮の境内までの道を、鬼を先頭に、獅子や武者、踊り子たちが列を組んで進みます。大正時代の絵巻を元に再現した行列です。本来の「花おどり」は行列もセットだったのです。長らく、境内での「おどり」だけの簡略版でした…。おそらく、この場にいるほとんどの人が初めて目にする光景です。

一行が境内に到着しました。

藤田善久 さん
「ただいまから、花のおどり、花のおどりを奉納いたします」

「太夫」役を務める藤田さんのかけ声で踊りが始まります。

獅子舞に続いて登場したのが踊り子たちです。

こうして、9年ぶりとなった花おどりは見物客を魅了して幕を閉じました。

来場者
「非常にしとやかというか、静けさがあって、その中にも力がこもっていましたね」

藤田善久 さん
「やっとできた。うまくいったな。うまくいったというのは過言かもしれませんが、終わった、できたっていう満足感が一番です。継承はしてまいります。なくさんように。そういう踊りです、この踊りは」

並々ならぬ努力によって復活した花おどり。地域の伝統文化をこれからも継承していきたいと藤田さんは話しています。

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