京都大学などの研究グループは、薄くて曲げられるペロブスカイト太陽電池の発電効率を向上させる技術を開発した。発電する素材を4層重ねて、様々な波長の光を吸収できるようにした。
京大の若宮淳志教授らと英オックスフォード大学、分子科学研究所、理化学研究所などとの共同研究の成果で、23日(現地時間)の英科学誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。
ペロブスカイト太陽電池は、ビルの壁面や窓ガラス、ビニールハウスなど、幅広い場所に設置することが可能だ。大学や企業による研究開発が活発で、本格的な実用化は2020年代後半に始まる見通しだ。
普及に向けては発電効率の向上が欠かせない。太陽電池は内部の半導体が光を吸収し、電気に変換する。半導体の種類によって吸収する光の波長が異なる。様々な波長の光を吸収して、発電効率を上げるためには異種材料を重ねる手段が有効だ。
研究グループは、ペロブスカイト半導体が4層重なった太陽電池を開発した。半導体を重ねる上で課題となっていたのが最下層の部材(ボトムセル)で、「底の部分に(電気を流しやすくする)分子を入れ込むことが難しかった」(若宮氏)。
研究グループは「フェニルアラニン」という物質がペロブスカイト半導体に含まれる金属のスズと相互作用しやすく、膜をつくる時に底の方へ配置できることを突き止めた。ボトムセルの成膜時に添加すると、ボトムセルの電圧が向上し、膜の品質も向上した。
その結果、4種類のペロブスカイト半導体の積層に成功し、発電効率27.9%を記録した。これまでに30%程度の効率を実現した研究もあるため、今後、効率の向上に磨きをかける。研究グループは膜厚を微修正すれば34.4%に向上できるとみている。35%に達すれば、発電しながら走行する「ソーラーカー」の実用化につながるとしている。
京大発スタートアップのエネコート・テクノロジーズに技術移転し、早期の実用化を目指す。
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