米エネルギー省は17日、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸出が経済と環境にもたらす影響に関する評価報告書を発表した。LNG輸出を制限しない場合は、温室効果ガス排出量が大幅に増加し、家庭向けガス料金の上昇も招くと指摘した。トランプ次期大統領の化石燃料増産の試みを遅らせるバイデン政権の対抗策とみなされている。
バイデン政権は気候変動への影響など「公共の利益」を評価するため、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいない国へのLNG輸出の新規認可を今年1月から一時凍結している。トランプ氏は来年1月の就任初日に認可を再開するとしているが、今回の影響評価を基に環境団体などが新たな輸出許可をめぐる妥当性を問う訴訟を起こす可能性がある。
報告書では、LNG輸出の影響について検討した五つのシナリオのうち四つで、これまで輸出が承認されている分の米国産LNGは、今後数十年の世界的な需要を満たす上で十分な量だと指摘した。50年までに制限なく輸出が継続する場合は、需給の逼迫(ひっぱく)により米国内のガス価格が3割近く上昇し、家庭向け平均ガス料金が年100ドル以上上昇すると試算した。
また、ウクライナ危機後にエネルギーのロシア依存脱却を図る欧州は米国産LNGの主要な供給先となっているが、脱化石燃料政策の進展によって長期的な需要には不確実性があるとも指摘した。
グランホルム長官は「LNG輸出量の将来に関する決定は次の政権によって下される」とした上で、「すべての米国民の公益を増進する方法で認可が審査されることを望む」とした。【ニューヨーク八田浩輔】
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