採取したホウガンヒルギを手にする古田耕治さん=愛媛県伊方町の佐田岬半島ミュージアムで2024年12月15日、松倉展人撮影

 四国最西端の愛媛県伊方町・佐田岬半島に10月、大きな砲丸投げの球がかけらになったような木の実が流れ着いた。その名も「ホウガンヒルギ」。漢字で「砲丸漂木」と書くセンダン科の植物の実と分かった。インド、東南アジア、太平洋諸島に分布し、佐田岬半島では初の確認例。南方から波に乗って漂着した種や実はほかにも12種ほど確認されており、伊方町にある佐田岬半島ミュージアムのミニ展示「流れ寄るタネと実」で公開されている。

古田さんが採取したホウガンヒルギの実。元は球形だが、熟すと割れて複数のブロックに分かれる=愛媛県伊方町の佐田岬半島ミュージアムで2014年12月15日、松倉展人撮影

 ホウガンヒルギを採取したのは、半島の歴史や自然、民俗を調べる「佐田岬みつけ隊」隊員で同町立九町(くちょう)小学校教諭の古田耕治さん(60)。俳句づくりが盛んな同校恒例の「親子俳句教室」で、句を作るために学校そばの宇和海の海岸に「吟行(ぎんこう)」に出かけ、偶然見つけた。その日、4年生の女子児童は「おばあちゃんのカツラみたい」と、繊維が頭髪のように見えるココヤシ(ヤシ科)の実を拾い上げた。古田さんは「南の島から流れ着いたのでしょう。残念ながら句は生まれませんでしたが、実り多い一日でした」と振り返る。

 古田さんはこれまで20年以上、年30日近く半島の海岸沿いを歩いて漂着植物などを調べている。地形や潮流の特性から、植物の確認例は半島北側の瀬戸内海沿いより南側の宇和海沿いのほうが多いが、ホウガンヒルギは目にしたことがなかったという。

佐田岬半島の宇和海沿岸で漂着植物を調べる「佐田岬みつけ隊」隊員ら。この日はヤシの実3個が見つかった=2024年12月14日、同隊提供

 別の隊員は2013年、実の形が碁盤の脚に似ていることから「ゴバンノアシ」と名付けられた熱帯地域のサガリバナ科植物の実を宇和海沿岸で発見。今回はその実も展示している。

 「みつけ隊」の有志4人は12月に宇和海沿いで漂着植物の調査を行い、1時間半ほどでヤシの実3個を採取した。事務局を担当する高嶋賢二・ミュージアム館長兼主任学芸員は「これらは植物の多様性、環境を見る指標ともなる。これからも調査や展示を続けたい」と話している。【松倉展人】

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