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<先住民やアフリカの信仰とキリスト教との宗教的混交と組み合わさってきた、アヤワスカの摂取と、それに続く浄化のダイナミクス。神経科学者による「夢」に関する科学的研究について>
夢とは何か? 夢を見ることを人類はどのように利用し、どのように人類を変えてきたのか――。
著名な神経科学者であるシダルタ・リベイロ博士が長年の研究を結集した、世界的ベストセラー『夢は人類をどう変えてきたのか──夢の歴史と科学』(作品社)より第7章「夢の生化学」より一部抜粋。
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N,N-DMT[編集部注:自然界に発生する幻覚剤であるジメチルトリプタミン]の調合薬として、科学的な観点から最もよく研究されているものはアヤワスカだ。
アヤワスカとはケチュア語で「精霊のつる」、あるいは「死者のつる」を意味する。N,N-DMT以外にも、アヤワスカには神経伝達物質を分解する酵素の阻害物質が含まれており、これがセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンのレベルを上昇させる。
別名ヤスカ、ダイミ、ヤヘ、あるいは単にヴェジェタル(植物)とも呼ばれるアヤワスカは、アマゾンやオリノコ盆地の先住民グループや、この薬によってもたらされる啓示的体験の儀式を世界中に広めている混交宗教によって、治療や占いの目的で使用されている。
アヤワスカの効果の中でも特に典型的なものの1つ(ただし一般的なものではない)に、視覚と行動をともなう状態である「ミラサォン」がある。
ミラサォンは強力な視覚体験に支配されており、本人は目を閉じたまま、見ているものを能動的に探求する。
この状態で見えるイメージは、現実と同じくらい鮮明でありながらも幻想的で、象徴性にあふれ、動物、植物、動物の特徴を持つ神話的クリーチャー、祖先の霊、助言や治癒を与えてくれる神々の存在が、深淵さと鮮やかさを持って色彩豊かに描き出される。
たとえ鮮明なビジョンが起こらない場合でも、アヤワスカの摂取は精神的あるいは霊的な浄化を引き起こす。この過程には、過去の行動を振り返ったり、厳しく自己批判をしたりすることが含まれる。
精神的な浄化は、しばしば嘔吐や下痢といった生理的な浄化と並行して起こり(またはそれによって引き起こされ)、その後、恍惚とした贖罪の感覚が訪れる。ほぼすべてのセロトニン受容体が消化管にあることを考えれば、こうした効果は驚くには当たらないだろう。
アヤワスカの摂取およびそれに続く浄化のダイナミクスは、先住民やアフリカの信仰とキリスト教との宗教的混交と組み合わさることで、この薬物を用いる宗教を強力な文化的空間、すなわち、人類が常に渇望してきた死と再生のサイクルを、この21世紀の世界において表現するための場として成り立たせている。
目を閉じて見るビジョン
夢を見ることと、アヤワスカによって誘発される視覚とが驚くほど似ていることに発想を得て、当時はバルセロナのサンパウ生物医学研究所に所属し、のちにマーストリヒト大学に移ったカタルーニャ人薬理学者ジョルディ・リーバは、アヤワスカが誘発するトランス状態についての先駆的な研究を行なっている。
アヤワスカを摂取する前後の脳波を記録することにより、リーバの研究チームは、速い脳波のパワーが増加し、それと並行して遅い脳波のパワーが減少することを示した。
これを睡眠の段階と比較してみると、アヤワスカによって引き起こされる脳の状態は、徐波睡眠[編集部注:穏やかな睡眠。ノンレム睡眠の一種]よりもむしろレム睡眠[編集部注:活動的な睡眠。この間夢をさかんに見る]に近いものであった。
夢とミラサォンとに類似性があることにも通ずるこの事実からは、いくつかの根本的な疑問が浮かび上がる。
アヤワスカを摂取したあとには、脳のどの領域が活性化されるのだろうか。目を開けているか閉じているかによって違いはあるだろうか。アヤワスカは想像力を高めるだろうか。
こうした疑問を解明するために、ブラジル人神経科学者で、リオグランデ・ド・ノルテ連邦大学におけるわたしの同僚であるドラウリオ・デ・アラウージョは、アヤワスカの影響下にある脳の活動について、視覚的なオブジェクトを想像する能力に焦点を当てた研究を行なった。
脳の活動の測定は、2つの連続するタスクを遂行している最中に、機能的磁気共鳴画像法を用いて行なわれた。
タスクの1つ目は、目を開けた状態での視覚認知、そしてもう1つは、目を閉じた状態での視覚的想像だ。
このプロトコルのヒントとなったのは、米国人神経科学者スティーヴン・コスリンがハーバード在学中に行なった古典的な研究であり、これにおいてコスリンは、視覚的なオブジェクトを想像することが、精神的な努力に比例して一次視覚野を活性化させることを示した。
アラウージョの研究の結果について説明する前に、1つ言及しておきたいことがある。わたしはこの実験の設計と、アラウージョが当時教授を務めていたサンパウロ大学リベイラン・プレト校の病院での最初のデータ収集作業に参加している。
わたしがこのとき痛感したのは、病院内に設置された磁気共鳴スキャナーの中にアヤワスカの体験を持ち込むことの難しさだ。
これが困難な理由としては、上述した生理的変化のほか、ボランティア参加者たちの信仰が挙げられる。彼らにとって、スキャニングを受けている状態で精神世界に入り込むというのは容易なことではなかった。
ボランティアたちは、サント・ダイミ教を信仰していた。サント・ダイミは、ウニオン・ド・ベジェタルやバルキーニャといった教団と並んで、アヤワスカを聖餐として用いる主要な混交宗教の1つだ。
アマゾンの熱帯雨林のシンボルに根ざしたこの混交宗派を実践する人たちにとって、魂が苦悩して頻繁に肉体を離れると信じられている病院という環境にいることは、とりわけ大きな負担となる。
アヤワスカを摂取する前後のデータを比較したところ、視覚、エピソード記憶の回復、意図的・予想的な想像に関連する脳皮質のさまざまな領域において、脳活動の増加が見られた。
その視覚領域は、夢や精神病性の幻覚を見ている最中に活性化される領域と一致しており、さらには、解剖学的に網膜に最も近い皮質領域である一次視覚野の活動は、アヤワスカ摂取後に体験される精神病のような症状と強い相関を示していた。
加えて、脳の異なる部位の間の関係にも有意な変化が見られ、脳活動の大々的な機能的再編成が起こっていることが明らかになった。
この結果は、目を閉じた状態で見ようとする──すなわち想像しようとする──活動が、アヤワスカの影響下においては、想像上の光景をかなりはっきり見ているという感覚を実際に生み出していることを示唆している。
この4年後には、インペリアル・カレッジ・ロンドンの英国人薬理学者デビッド・ナット率いるグループが、LSDを用いて同様の結果を得ている。同研究では、目を閉じている状態でも視覚系が強力に活性化することが示された。
シダルタ・リベイロ(Sidarta Ribeiro)
ブラジルのリオグランデ・ド・ノルテ連邦大学脳研究所の創設者で初代所長、神経科学科教授。ロックフェラー大学で動物行動学の博士号を取得。研究テーマは、記憶、睡眠と夢、ニューロンの可塑性、人間以外の動物の記号能力、計算精神医学、幻覚剤、薬物政策など多岐にわたる。著書に『Limiar: Ciência e vidacontemporânea(閾値――科学と現代生活)』のほか、眠りやニューロテクノロジーについての著作が数冊ある。
『夢は人類をどう変えてきたのか──夢の歴史と科学』
シダルタ・リベイロ[著]
北村京子[訳] 須貝秀平[監]
作品社[刊]
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ドキュメンタリー「アヤワスカの力」
The Nature of Ayahuasca (2019) Documentary「サイケデリックな治癒力」
We Went to an Ayahuasca Retreat to Experience its 'Psychedelic Healing Powers'鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。