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<メープルシロップを摂取した被験者は、血圧の値が有意に改善。また、腸内の善玉菌も増加>
精製された砂糖の代わりにメープルシロップを摂ることで、代謝疾患のリスクを減らせる可能性があると、カナダの研究で示された。
「メープルシロップは砂糖以上のものであることは、数十年の研究から分かっています」と述べるのは、本研究の主席研究者であるアンドレ・マレ博士だ。
「メープルシロップには100種類以上の自然化合物が含まれており、その中には抗炎症作用によって病気を予防することが知られるポリフェノールも含まれています」
代謝疾患とは、肥満、および2型糖尿病、高血圧、インスリン抵抗性、心臓病など肥満に関連する疾患の総称である。
糖質の高い食事と炎症は、代謝疾患の2つの主要なリスク要因として知られている。しかし、すべての糖が健康に有害かどうかについては、栄養の専門家や科学者の中で長い間議論されてきた。マレ博士は次のように語る。
「メープルシロップの基本的な化学構造が独特であるため、精製された砂糖と同量のメープルシロップを摂取することで、ヒトのの心代謝系の健康や腸内細菌叢(腸内フローラ)に異なる影響を与えるのではないかと考えています。
結果は極めて有望なものでした。比較的短期間の治療で、これほど多くのリスク要因が改善されるとは予想していなかったのです」
この研究は、カナダのケベック州とその周辺に住む18~75歳の42人を対象に行われた。全員が過体重である以外は健康は良好状態であった。
研究の参加者は2つのグループに分けられ、一方のグループは8週間の間、1日の総摂取カロリーの5%をカナダ産メープルシロップに変更。もう一方のグループは人工甘味料入りのショ糖シロップを同量摂取した。
この8週間後、被験者は通常の食事に戻って4週間を過ごし、その後さらに8週間、別の種類の砂糖を摂取した。
このため、参加者全員がメープルシロップと人工甘味料入りのショ糖シロップの両方を8週間ずつ摂取し、大さじ2杯のカナダ産メープルシロップと大さじ2杯のショ糖シロップを食べた場合の人体への影響を直接的に比較することができたのだ。
メープルシロップを摂取することで、血糖値、血圧、腹部脂肪など、代謝疾患のいくつかの指標が改善されることが認められた。
そしてメープルシロップを摂取した被験者は、血圧の値が有意に改善したが、ショ糖シロップを摂取したグループは通常の食事を摂るよりも血圧が高くなる結果となった。
また、内臓脂肪は心臓病、糖尿病、脳卒中、その他の代謝疾患のリスク増加と関連しているが、ショ糖シロップをメープルシロップに置き換えた被験者は内臓脂肪が減少。ショ糖シロップを摂取した被験者は内臓脂肪が増加したことが判明した。マレ博士は次のように述べる。
「このような主要なリスク要因の複合的な減少は、糖尿病や心血管疾患のリスクを減らすのに役立つ可能性があります」
さらに、メープルシロップを摂取することで腸の健康にも予想外のメリットがあることも分かった。メープルシロップを摂取したグループでは、腸内の善玉菌のレベルが改善し、炎症や代謝障害に関連する腸内細菌が減少したのだ。
「精製された砂糖をメープルシロップという天然甘味料に置き換えることで、代謝疾患を予防できるという証拠が得られました。
他の人口グループを対象にしたより大規模な研究を行い、精製された砂糖をメープルシロップに置き換えることで、それぞれの健康状態にどのような影響を与えるかを探ることが次なる目標です」とマレ博士は語る。
この研究はケベック心肺研究所のマレ博士と、栄養機能食品研究所のマリー=クロード・ヴォール博士が率いるラヴァル大学のチームによって行われ、『ジャーナル・オブ・ニュートリション(The Journal of Nutrition)』に掲載されている。
本研究は1万3500人のメープルシロップ生産者と8400のメープルシロップの企業団体「ケベック・メープルシロップ生産者連盟」から研究資金の一部の助成を受けている。
【参考文献】
Morisette, A., Agrinier, A. L., Gignac, T., Ramadan, L., Diop, K., Marois, J., Varin, T. V., Pilon, G., Simard, S. Larose, É., Gagnon, C., Arsenault, B. J., Després, J. P., Carreau, A. M., Vohl, M. C., Marette, A. (2024). Substituting Refined Sugars With Maple Syrup Decreases Key Cardiometabolic Risk Factors in Individuals With Mild Metabolic Alterations: A Randomized, Double-Blind, Controlled Crossover Trial, The Journal of Nutrition 154(10).
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