最寄り駅の防犯カメラ 特徴似た人物写らず
現場周辺の状況は
各地で安全呼びかけ
どう身を守る?専門家は
これは18日、北九州市の武内市長が臨時の記者会見を開いて明らかにしました。市長は「当たり前の日常が奪われたことに対して、強い怒りがこみ上げます。心からお悔やみとお見舞いを申し上げます」と述べたうえで、市の対応について説明しました。それによりますと、子どもの安全を確保するため、19日から終業式が行われる23日にかけて、市の職員およそ1000人が登下校の時間帯に通学路などに出てパトロールを行うということです。また、子どもが大きなショックを受けた際にあらわれる反応などを一覧にしたリストを作成し、学校や保護者に配布することにしました。具体的には寝つきが悪い、腹痛や頭痛がする、食欲がないなどといった反応で、市は必要に応じて市の窓口に相談してほしいとしています。
12月14日夜、北九州市小倉南区徳力にあるファストフード店で、中学3年の男女が男に刃物で刺され、このうち中島咲彩さん(15)が死亡しました。一緒にいた男子生徒も、致命傷になりかねない深い傷を負ったということです。
男は徒歩で北の方向に逃げたとみられていますが、現場から350メートルほど北側にある最寄りの北九州モノレール徳力公団前駅の複数台の防犯カメラを警察が調べたところ、事件前後の時間帯に特徴の似た人物の姿が写っていなかったことが、捜査関係者への取材で新たにわかりました。現場の店舗は国道322号線沿いにあり、事件直後に警察が主要な道路などで行った緊急配備では、有力な手がかりは得られなかったということです。警察は周辺の路地裏も含めて捜索し、行方を捜査するとともに、不審者の情報が相次いで寄せられていることから警戒を強めています。
ファストフード店は、北九州市の中心部から南に6キロほど離れていて、周辺には商店や飲食店が建ち並んでいます。NHKの取材班が事件が起きた同じ時間帯の午後8時半ごろ、徳力公団前駅近くの状況を確認したところ、帰宅途中の会社員らが行き交う様子がみられました。南北にのびる国道の両側には、2300戸あまりの集合住宅「徳力団地」や、戸建ての住宅などが建ち並ぶ住宅街が広がっています。住宅街に入ると、街灯も少なく、夜間は人通りもまばらです。
乗用車1台分の道幅しかない路地もあり、近隣の住民によりますと、高齢者が暮らしている割合が高いということです。近くに住む80代の女性は「いまの時期は寒いので、夜間は特に住宅街の人通りが少ないと思います。街灯も少なく、もう少し明るくしてほしい」と話していました。
事件を受け、東京・杉並区では、防犯パトロールを行っている地域のボランティアが子どもたちに改めて安全に気を配るよう呼びかけました。
杉並区高井戸東では下校後の小学生や中学生を見守るため、17年前から地域のボランティアによる防犯パトロールが週の半分ほど行われています。18日は小学生が下校後、遊びに出る時間にあわせ、8人のボランティアが集まって北九州市での事件について情報共有を行ったあと、徒歩でパトロールを行いました。8人は公園や人通りの少ない住宅地の路地などを重点的にまわり、居合わせた子どもに「暗くなる前に気をつけて家に帰ってね」とか、「不審な人に声をかけられたときは絶対について行かないですぐに助けを求めてね」などと声をかけていました。ボランティアグループの代表の杉山卓男さんは「防犯の目をくまなく行き届かせて子どもたちを見守ることがとても大事だと思います。この地域で事件が起きないようパトロールをしていきたい」と話していました。
最新の技術を使った下校時の見守りの実証実験も、千葉県で行われています。この実験は、中学生の下校にあわせてドローンを自動で飛ばし、カメラから送られてくる映像を教職員が学校内に設置されたモニターで確認する仕組みで行われています。町内で行うドローンに関する取り組みで包括連携協定を結んでいる千葉県東庄町と都内の一般社団法人が、ことし4月からこれまでに3回行っています。東庄町では通学路に防犯カメラがほとんどなく人通りが少ない道が多いため、下校時の生徒の見守りが課題となっています。こうしたことを受け、事前にプログラムされたルートを自動で飛ぶドローンを使って、町に唯一ある中学校で実証実験を始めました。通学路を見渡せる上空にドローンを飛ばし、ズームして映像を拡大したり、ドローンから自動音声で呼びかけたりすることもできるということです。ドローンには赤外線カメラも取り付けられているため、日没後の見守りも可能だということです。
ことし4月に行った実証実験の映像では、田畑のあいだを通る通学路を下校する生徒の様子が、上空から鮮明に捉えられています。今後は導入に向け、教職員がカメラの向きを操作したり、対象の位置情報を把握したりすることも行うということです。東庄町は、住民のプライバシーや飛行の安全に気をつけ、実用化に向けて検証を重ねていきたいとしています。一般社団法人国際ドローン協会の榎本幸太郎代表理事は「防犯カメラが少ない場所でも広い範囲を見ることができ、死角を減らすことができる。見守りのドローンが飛行していることで事件を未然に防ぐ抑止力にもつながる」と話していました。
犯罪からどう身を守ればよいのか、各地で防犯指導を行っている市民防犯インストラクターの武田信彦さんに話を聞きました。武田さんは「これまで外での防犯対策の基本は、『なるべく1人にならない』というもので、ほかの人がいることで犯罪が起きにくい雰囲気が生み出されるということだったが、今回は人が集まる所で短時間で起き、対策は極めて難しい」と指摘します。そのうえで自分でできることとして、日頃から周囲に目を配る意識を持つことや、もしもの場面に遭遇した際はすぐに現場から離れることが必要だとしています。また、万が一の際に被害の拡大を防ぐために、「『危ない、逃げよう』と声をかけ合うことや応急手当をすることなど周りの人が動くことが欠かせない」と話しました。そして、改めて地域の連携が大切だとして、「過剰な防犯意識は地域のコミュニケーションや関わりを減らすリスクをはらんでいる。子どもの防犯対策では地域で関わる人が多いほど犯罪をしづらくする雰囲気をつくる」と訴えていました。
逃げた男の特徴について、警察が店内の防犯カメラを詳しく解析したところ、履いていたものは黄色っぽい靴ではなく、黄色っぽいサンダルのようなものだと16日発表しました。警察が16日までに公表している特徴です。▽年齢は40歳ぐらいで▽身長が1メートル70センチ程度の中肉▽灰色の上着と黒のズボンを着用し▽黄色っぽいサンダルのようなものを履いていたということです。サンダルは、つま先があいていて甲が覆われたかたちだということです。事件に関する情報は、小倉南警察署で受け付けていて、電話番号は093-923-0110です。
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