医療脱毛大手「アリシアクリニック」が10日、突然営業を停止した。理由は破産。同クリニックを経営していた2つの法人団体の負債総額は約124億円で、債権者数は実に約9万2000人にもなり、過去最大規模になっている。患者からは返金を求めるものの戻る見込みもなく、また施術の途中だったと嘆く声が相次いでいるが、全43店舗で施術の継続や返金は極めて難しいと言われている。
【映像】突然解雇された元従業員で看護師のアカリさん
レーザー機器などを使って毛根を破壊し永久脱毛をする医療行為だが、今年は脱毛サロンの倒産が相次ぎ、14件と最多を更新した。参入障壁が低く、低価格化に加え、顧客獲得のために有名芸能人を起用することで宣伝広告費が負担になり、資金調達が困難になったという分析もある。『ABEMA Prime』ではアリシアクリニックが破産した当日まで働いていた元従業員に、その時の状況を聞くとともに、専門家と倒産ラッシュの原因を考えた。
■元従業員、破産は「リモートで説明だけ。1時間もしないで終わった」
倒産が続く脱毛業界においても、大手だったアリシアクリニックの破産は大きな衝撃となった。実際に看護師として働いていたアカリさんは、どのようにして破産を知ったのか。「破産を知ったのはみなさんと同じ10日当日。細かく言うと11時に破産手続きが行われたが、我々は1時間前の10時から説明会がリモートで行われた。全員リモートで参加していて、理事長の方と弁護士の方と複数名の方だけ映像で確認できて、我々全国の院はそのままリモートで話だけを聞くという形で説明を受けた」という。
突然、解雇になったが保障らしいものはない。「保障、給料は会社がいろいろ売ったりしても用意ができないので、立て替えの手続きをするしかないという話だった。解雇予告手当も出ない・出せないということだった。(給料は)11月分までは支払われてはいるが、12月末に払われるものはもう出ないと聞いている」。
大手だけに、破産の前には兆候やうわさが入りそうなものだ。「今年の5月くらいに減給があったり、福利厚生の見直しがあった頃に、『もしかして経営がやばいのかな』といううわさはがあったが、根拠やうわさの出所もはっきりしなかった。やはり我々従業員は、大手だし、広告もそのまま続いているし、患者様もいらっしゃるので、きっとこのまま続いていくのかなという感じ」だった。
前触れもない破産の通達に、従業員たちはどう反応したのか。「本当に驚きという感じ。9日の夜、終業の頃くらいに、明日10日、全院休業になるという通達と、公休だったり有休を取っている従業員も、全て配属院に出勤するようにという伝達があった。それも緊急カンファレンスが行われるという話で、詳しくは聞かずに出勤した。ちょっといつもの出勤時間より早めに行って、そうしたら破産手続きを行うという話になった。説明会自体も1時間ないくらいで終わってしまった」。全国で従業員は一斉に解雇となり、アカリさんはまだ再就職先を見つけられていない。
■破産の前兆?リース品が撤去に
日本脱毛安全普及協会元代表理事で、現在は法律顧問を務める弁護士の山岸純氏は、今回の倒産にも予兆があったと見る。「ウォーターサーバーが撤去されたとあったが、これはリース品だ。リース会社はすぐに回収する。危ないと思った会社から最初に逃げていく。ウォーターサーバー撤去というのは、これはまさにお作法だ。なかなか分からないところだと、観葉植物もリース品。場合によっては店舗では化粧品とかいろいろな物品を売っているが、そういう棚や照明もリースだったりする」と説明した。
また、クレジットカードが使えなくなったという店も疑問点だ。説明ではシステム障害で、復旧の日時も決まっているとされていた。アカリさんは「看護師も施術をしながら患者さんに合わせておすすめの商品だったり、こういった医療も用意があるとお話ししていたが、クレジットカードで払われる患者さまが多かった。なので、あまりそういった説明だったり、営業は積極的には(しなくて)いいと言われて、余計『なぜ急に?』という感じではあった」と述べた。
一般的な企業とはことなり「医療法人」が経営していた脱毛クリニック、しかも大手のチェーンが倒産となると、これは異常な事態だ。山岸氏は「一般的に医療法人が潰れるのは本当に聞いたことがない。医療法人は基本的には潰れないような体質になっている。例えば広告をするにあたって、あれはやっちゃいけない・これはやっちゃいけないと、ものすごく厳しい規制がある。そうすると広告にそんなにお金をかけることができない。健全な体質しかあり得ないのだが、今回こうやって医療法人で脱毛サロンが倒産するのだとびっくりした」。
■最大の要因は広告への過剰投資か「ぐるぐる回って止まれないマグロみたいなもの」
そんな中、アリシアクリニックが倒産したのが、過剰な広告への投資だったと山岸氏は説明する。「おそらくだが、ネット広告費用のかけすぎというのが一番。アフィリエイト広告とかリスティング広告で『脱毛』(という検索ワード)で、自分のサロンがヒットするように、大手・準大手が競い合っているわけだ。適当な数字で言うと、こっちは1000円出す、1500円出す、2000円出すということで、単価がどんどん上がっていく。そう考えると、資金的な体力が尽きたところから倒産していくという状況だ」と分析した。
医療脱毛は、ある程度サービスが標準化もされている。きちんとした施術であれば、どこでも効果に大きな差はなくなっている。それだけに山岸氏は「太平洋をぐるぐる回っているマグロみたいに止まれない。広告費をかけないとお客さんが来なくなって倒産してしまう」のだという。さながら課金をしながる続けるゲームのようでもあり「持続性はない。どこかで共倒れになるのかもしれない」と可能性を指摘していた。
(『ABEMA Prime』より)
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