住宅設備を扱う東京 中央区の「橋本総業」について、公正取引委員会は、2024年6月に立ち入り検査を行い、製品の配送を委託したおよそ25の運送会社に対し、遅くとも2017年7月以降、
▽時間外労働の対価を支払わなかったり
▽1時間あたりの推計賃金が最低賃金を下回る「買いたたき」をしたりしたとして、
独占禁止法違反の疑いで審査を行ってきました。

その結果、橋本総業が提出した、こうした行為をやめて、運送会社に総額およそ3800万円の金銭的回復を行うことなどの再発防止の「確約計画」を認定したと発表しました。

発注側の荷主の立場が強い物流業界は、「物流特殊指定」で独占禁止法を適用し、不公正な取引を禁止していて、これによる初めての行政処分となります。

橋本総業は「確約計画を確実に実施するとともにコンプライアンスの徹底を一層強化し、事業活動を進めてまいります」とコメントしています。

物流業界の「2024年問題」で、運転手不足の深刻化が懸念される中、公正取引委員会は11月、オフィス家具大手に対しても、警告を出すなど監視を強化しています。

公正取引委員会の担当者は、12日の会見で「同様の行為が今後生じないよう、ほかの荷主も法令順守に努めてほしい」と呼びかけました。

排除措置命令など免除される「確約手続き」

今回の行政処分は、独占禁止法違反を疑われた企業が、自主的に改善計画を提出して認定されれば、排除措置命令や課徴金納付命令を免除する「確約手続き」と呼ばれ、6年前の2018年に導入されました。

「確約手続き」は、公正取引委員会が、問題となる行為を認定する一方違法性については、「疑い」にとどめることで、調査の期間を大幅に短縮でき、市場の競争環境を回復する効果的な手段として活用が進んでいて、制度の導入以降、今回で20件目です。

「確約手続き」では、企業が計画の履行状況を毎年、公正取引委員会に報告することになっていますが、計画が履行されなくてもペナルティーがないことなどから、公正取引委員会は、2024年7月、実効性を高めるため運用を見直しました。

新たな運用では、
▽計画の取り組みを、弁護士や公認会計士などの第三者が監視することを義務づけているほか
▽慣例で3年としていた報告の期間を、原則5年以上に拡大しました。

公正取引委員会は「排除措置命令を行うには、審査を継続して違反を認定する必要があるが、相当な時間を要する。確約計画で、違反の疑いのある行為が早期に排除されることになれば、事業者にとってメリットが大きく、公正取引委員会にとっても事案を早期に解決することができ、ほかの審査に力を注げる側面もある」としています。

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