◆前売り券「大半が企業による購入」が現実
大阪府の府庁舎と大阪・関西万博のマスコット「ミャクミャク」(コラージュ)
「低調」とも報じられる万博前売り券の販売状況。日本国際博覧会協会(万博協会)はどう捉えるのか。東京新聞「こちら特報部」が尋ねると、担当者の口からはあくまで前向きに捉える言葉が出てきた。「オントラックです」。順調に進んでいる状態、という意味だ。 ただ先月30日で発売から1年となったのに、今月4日時点で売れたのは目標の半分程度の約740万枚。担当者は「大半が企業による購入」と認める。 一部報道では、それが何枚だったか、一般向けの販売済み枚数がどうか、関係者情報として伝えられるが、担当者は「内訳は物理的に区別が難しく、公表していない。いずれ推計値を出す」と回答を避けた。◆運営費の「8割超」を入場券収入でまかなう計画
協会の計画では、人件費や広報宣伝費をはじめとする運営費の8割超を入場券収入でまかなう。国や大阪府・市、経済界が負担する会場建設費と違い、運営費は協会が財源を確保する。 運営費の規模は5年前の時点で809億円だった一方、昨年12月に1160億円に増額。入場券収入の想定は当初の702億円から969億円に引き上げた。 目標の来場者数は約2820万人。大人6000円を基本とする前売り券は1400万枚の販売を目指し、企業向けと一般向けでそれぞれ半々と見立てている。◆チケットが売れなければ、赤字が現実味を帯びる
ただ発売から1年でも、一般向けが伸び悩む。基本は電子チケット。購入者層の幅を広げようと10月から紙チケットの販売も始めたが、効果は見えない。 それでも前向きなのが先の担当者。「現在購入している人は熱心なファン層。来年1月半ばからパビリオンやイベントの本格予約が始まれば動きが出てくる」X(旧ツイッター)の万博公式アカウント(スクリーンショット)
入場券の販売が滞れば、赤字が現実味を帯びる。気になるのが補填(ほてん)の方法。どうするつもりか尋ねたが、担当者は「万博の魅力や楽しさを発信し、一層の機運醸成に努めることが重要」と答えるばかりだった。◆Adoさん効果? Xフォロワーは増えたけど…
協会は今年7月から交流サイト(SNS)での情報発信の強化も始めている。 在阪のシンクタンク「アジア太平洋研究所」によると、X(旧ツイッター)の万博公式アカウントのフォロワー数は7月末時点の約7万8000弱から、11月15日には約8万9000に増えた。表示回数は、8月の平均1.9万に対し9月平均はほぼ倍増。ただ、歌手Ado(アド)さんの開幕記念ライブ出演決定や男性アーティストのビデオメッセージ公開の影響とも。野村亮輔副主任研究員は今後について「ターゲットの層を絞り、Xで拡散したくなるコンテンツをタイムリーに出すことが必要」と話す。 一般向けの販売が低調だと、企業向けの割り当てがさらに増えないか、とも思えてくる。 関西経済連合会の場合、主要加盟企業1社当たり15万〜20万枚の前売り券購入を既に割り当てている。20万枚を購入したJR西日本の労働組合に取材すると、担当者は「現状は福利厚生の一環と思っている。(さらなる買い増しは)聞いていないが、そうなれば労使で話す必要がある」と話す。◆工事現場でガス爆発
前売り券の販売状況から浮かび上がるのは万博への冷ややかな空気感だ。吉村洋文大阪府知事(資料写真)
不信感を増幅させるのが膨らむ費用。資材価格や人件費の高騰で会場建設費は当初の1250億円から23...残り 1552/3104 文字
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