袴田巌さん(88)は、静岡県で一家4人が殺害された事件の再審で10月、無罪が確定し、逮捕から58年を経て「死刑囚」の立場から解放されました。

元プロボクサーの袴田さんを長年支援してきた日本プロボクシング協会は、東京の後楽園ホールに「袴田巌シート」を設置するなどいつでも観戦できるよう準備していて、29日夜、試合に招待しました。

袴田さんは車いすで会場に入り、釈放された後の2015年以来、9年ぶりにリングサイドで試合を観戦し、姉のひで子さん(91)は用意されたシートで試合を見守りました。

当初、袴田さんはリングの上であいさつする予定でしたが、47年7か月にわたって収容され意思の疎通が難しくなった影響が残っているため、急きょ対応できなくなり、代わりにひで子さんがリングにあがりました。

ひで子さんは「58年闘いましてやっと勝ちました。死刑囚でなくなりました。本当に皆さんの応援、ご支援のおかげで今の結果があると思います。ありがとうございました」と述べました。

また、プロボクシングで無敗のまま3階級制覇を果たし、袴田さんの支援活動に参加していた中谷潤人選手もリングに登壇し「本当におめでとうございます。これからも体にご自愛いただき、健康に過ごしていただきたい」と話したあと、リングを下りて袴田さんにことばをかけていました。

袴田さんの姉 ひで子さん「ボクシングは青春そのもの」

試合を観戦したあと、ひで子さんは中谷選手などと記者会見を行いました。

この中でひで子さんは、袴田さんについて「きょうはお祝いに行くと巌に伝えたら、喜んで素直についてきた。5分前まではリングに上がる予定だったが上がれず、後遺症は恐ろしいと思った。死刑囚でなくなっても後遺症は今も巌に出ていて、一生治らないと思っている。そのままの巌を受け入れて今も生きています」と述べました。

その上で「これが最後ではなく、機嫌がいいときには連れて行きたい。巌はボクシングで鍛えてきたから頑張れたと思っている。ボクシングを愛しているのは間違いないし、ボクシングは青春そのものでしょう。出かけてこられたのは大変うれしく思っている」と話していました。

また、中谷選手は「袴田さんと初めてお会いして思いを伝えさせてもらいました。長い間闘ってこられたというのもあり、すごく力をもらえました」と話していました。

今回、袴田さんを招待した日本プロボクシング協会のメンバーで、元東洋太平洋バンタム級チャンピオンの新田渉世さんは「少しでもボクシングを思い出していただけたらと思ってたので、来ていただいてよかったと思います」と話していました。

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