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 厚生労働省が、全国民が受け取る基礎年金の給付水準を約3割底上げする方針だと、共同通信が関係者の話として報じた。一方で、水準アップの財源を、企業や会社員などが積み立てる厚生年金の積立金からまかなうとも伝えられ、「不公平だ」などと反発の声が多数。なかには年金を払わない選択をした人もいる。

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 年金をめぐっては「払った額が回収できない」と思う人も多い中、実情はどうなのか。『ABEMA Prime』では、過去に年金を支払わず差し押さえられた経験者と、年金制度の見直しを議論する厚労省・年金部会のメンバーと考えた。

■基礎年金の給付水準アップは歓迎、でも本当にもらえる?

 現状は、会社員や自営業、主婦など誰もがもらえる国民年金(月額1万7000円)と、会社員や公務員がもらえる厚生年金(給与×18.3%を天引き)があり、今回の案は国民年金の給付水準を3割アップするもの。厚生年金の積立金(余剰金)での補てんが検討されている。

 コラムニストの河崎環氏は「国民年金だけのフリーランスや自営業(1号被保険者)からすると、基礎年金額が3割違うのは大きい。会社員などの2号被保険者も、基礎年金の増加はグッドニュースだが、感情的には許せないという意見も多いのだろう」と語る。

 パブリックテクノロジーズ取締役CTOのTehu氏は、「厚生年金で払った保険料が、国民年金に横流しされているようなイメージがある」として、その背景には「年金に対する不安や不満」があると考察する。

 「ぱーてぃーちゃん」すがちゃん最高No.1は、「自分は今33歳だが、同年代や20代の若手芸人は『年金はもらえない』と感じている人がほとんどで、『払う意味もあるのか』と考える人が多い」と現状を語る。

■年金未納で2000万円超の銀行口座が差し押さえに

 国民年金法第9条では「国民年金加入は国民の義務」と定められているが、若者を中心に年金不信は広がっている。Xには「保険料払ってるがほぼ期待してない」「年金という泥船の沈没スピードが多少遅くなってもねぇ」「自分が払った分が元本割れするとか意味わからない」「制度は理解する。でも目先の負担感を何とかして欲しい」といった声が出ている。

 年金の未納が続くと、処分を受けることになる。年収300万円で未納が7カ月以上続くと、納付状況を踏まえつつ最終催告状が送付される。それでも自主納付しないと督促状が送付され、最終的に滞納処分(現金、不動産、銀行口座の差し押さえなど)が行われる。

 漫画家の小田原ドラゴン氏は、年金を約20年間納めず、銀行口座を差し押さえられた経験を持つ。24歳で会社員を辞め、バイト生活を経て漫画家に転身したが、いつの間にか年金を支払わなくなり、督促状も「なんか来ているな」程度で無視していた。

 そして52歳(2022年)で、銀行口座の2130万円全額を差し押さえられる。2日後に年金事務所を訪問し、未納分のうち47万円の納付と、自動引き落としの手続きを行ったところ、翌日に差し押さえ全額が振り込まれた。

 年金を払わなくなった理由は、「若い時から『年金を払っても戻ってこない』と言われていた。同世代は皆、払いたくないと思っている。僕は払っても戻ってくると思っていない。意味があるのか」と振り返る。

■専門家「騙されたと思って払って」「人は50年先のことは考えられない」

 厚労省社会保障審議会・年金部会の委員を務める慶應大学教授の権丈善一氏は、「学生には『騙されたと思って払って』と言っている」という。「人間は時間軸の変化を正確に理解できず、50年先のことは考えられない。高齢者の貧困を避けるために、若い時から払う年金制度ができた。払っておかないと後悔する」。

 Tehu氏は「よく『平均寿命まで生きると、何千万円損をする』というグラフが出回っている」と紹介しつつ、「全体を見ると損だとしても、高齢になって明日の食べ物にも困る時に、少しでも年金が出ていることが大事だ。ただ、お金を貸す時に『返ってこない』と思うように、信用はしていない」と語る。

 権丈氏は「年金制度は頑丈で、なかなか破綻しない」と話す。「いつまで生きるかわからない“長生きリスク”があるが、死ぬまで一定額を保証してくれる制度を、資本主義のなかに作った。試算には『損をする』も『元が取れる』もある」。

■年金は「日本という国に住まわせてもらうためのサブスク」

 河崎氏は「いまの20〜30代は、投資感覚を若い頃から教わっている」としつつ、ドラゴン氏と同年代の立場から、「私たちの頃は、有価証券に投資するなんて考えたこともなかった」と明かす。「新卒で社会人になった時、月1万7000円と給料の18.3%は大きく、怒りの方が大きいのではないか」。

 河崎氏自身は、夫の3号被保険者として、年金支払いを行わない時期があった。「フリーランスになって、気合を入れようと1号に戻した。自分で払って思ったのは、『日本という国に住まわせてもらうためのサブスク』だということ。インフラも治安も良い。物価も安く、食事も美味しい。住まわせてもらうための義務をある程度負担してもいいのではないか」。

 若年層にとっては「負担感が大きい」としつつ、「後々、払っておけばよかったと思う」と予想して、「サブスクとしては高めだが、大人になると、『これで住まわせてもらえるならありがたい』という金額になる」とアドバイスした。
(『ABEMA Prime』より)

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