有山楓さんが見つかった現場に供えられた花束とメッセージ(16日午前、奈良県平群町)=共同

奈良県で2004年、小学1年の有山楓さん(当時7)が誘拐、殺害された事件は17日で発生から20年を迎えた。これに合わせ、父親の茂樹さん(50)が県警を通じて手記を公開した。

事件は04年11月17日、楓さんが下校中に行方不明となり、翌日、同県平群町で遺体が見つかった。事件を起こした小林薫元死刑囚(執行当時44)は最後まで遺族に対する明確な謝罪の言葉を口にしないまま13年に刑が執行された。

茂樹さんは毎年11月、手記を発表し、楓さんとの思い出や子どもの犯罪被害防止、命の大切さを訴えてきた。茂樹さんが公開した手記の全文は次の通り。

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ことしで楓が被害に遭って20年がたちます。よく節目と言われますが、悲しみや後悔の思いは時間が過ぎようとも変わることはありません。警察署で再会した楓の表情、家の中の私たち家族へ向けられたフラッシュの嵐は今でも鮮明に記憶しているのに笑顔いっぱいの楓の写真を見て楓の言葉は思い出せても、元気な声が時間とともに頭の中に響かなくなってきました。当時の悲しみとは違い時間の経過が新たな悲しみや苦しみを生み出してきます。

楓がいない20年間、私は前に進まなければならないと必死にもがいてきましたが、一歩が本当に重く感じる毎日でした。それでも楓の生きた7年間だけでなく、今も楓への思いを忘れず、二度と悲しい事件を起こさない取り組みを継続してくれている多くの方に支えてもらい、気持ちだけは前を向いて進んでこられました。この20年が大切な時間であったと思えるのも、きっと楓が今も私のそばにいて、思いや縁をつないでくれたからだと思っています。

残された者の苦しみは言い表せません。思いを出すことも出さないことも本当に辛いものです。このような思いを誰にもしてほしくありません。行政、地域、学校による安全への取り組みが続くことを心より願います。〔共同〕

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