〈主なトピック〉
・名称が違うだけ
・欠点補うため2枚持ち
・107億円かけたのに「ややこしく」
・見えないコストって何
・「無保険」怖い
・配って終わりじゃない健保の仕事
・本人も知らぬままに…
◆マイナ保険証を持っていない人すべてに「資格確認書」
10月下旬、新聞に掲載された資格確認書についての政府広報。政府のマイナンバーPRキャラクター「マイナちゃん」が資格確認書とマイナンバーカードの2枚を持っている(由木直子撮影)
388億円は、厚生労働省が2022、23年度の補正予算に計上していた。このうち7割超の281億円が、資格確認書に関わる経費だった。 政府は、現行保険証を廃止しても保険診療が受けられるように、マイナ保険証を持っていない人すべてに資格確認書を無償で交付するとしている。 281億円の多くは、資格確認書を交付するため、健保側がシステムを改修するのに国が全額補助した費用だ。◆「名称以外に大きい変更はない」けどカネはかかる
ただ、現行の保険証を残していれば、そもそもシステム改修は不要だ。川崎市の「資格確認書」(上)と「被保険者証」(下)。見た目がそっくりで、川崎市は10月、誤って一部の市民に資格確認書を送付してしまった
券面に印字される内容も、現行の保険証とほとんど変わらない。川崎市では保険証と取り違えて発送したほどだ。 厚労省の日原知己審議官(当時)も、今年5月の衆議院総務委員会で、両者の違いついて「名称が違うという以外に大きい変更はない」と明言している。 厚労省幹部の発言に、国会議員がかみついた。「文字を変えるためにシステムを変えるのであれば、これほど無駄なことはない。今までの保険証をこのまま発行し続けていけばいいじゃないか」◆弊害対策に追われて書類増殖 「資格情報のお知らせ」
388億円のうち残りの107億円は、「資格情報のお知らせ」という書類を新たに発行するためのコスト。企業などの健保が、マイナ保険証を持っている人らに送る費用を国が全額負担した。 この書類も、マイナ保険証の欠点を補うために国が新たに作ったものだ。 マイナンバーカードの券面には、加入する健保の名称など保険情報の記載がない。カードリーダーにかざして情報を読み取る。 ところが、カードリーダーは不具合で読み取れないことがある。停電時には使えない。こうしたトラブル時、代替の証明書として作ったのが資格情報のお知らせだ。◆結局2枚持ち歩くことに…対応する病院や薬局の仕事は複雑化
利用者からすると、トラブルに備えて、マイナ保険証と資格情報のお知らせを2枚持ち歩くことになる。病院や薬局にとっても、これまでは保険証1枚だった証明書類の種類が増えて、窓口業務が煩雑になる。 国会では議員から「ややこしい」との批判も。実際、9月ごろから、健保の加入者の元に資格情報のお知らせが届くようになると、資格確認書と混同してしまう人も現れた。 現行の保険証を廃止することで制度が複雑になっても、周知は十分に行き届いていない。 ◇ ◇◆健康保険組合や自治体は対応のために支出を迫られ
現行の健康保険証が12月からは「資格確認書」に変わるだけ?。SNSでは、そんな書き込みを目にする。実は、資格確認書を交付する健康保険組合や自治体には、「だけ」では済まないほどの負担がのしかかる。 国は、マイナ保険証を持っていない人に、保険証代わりとなる資格確認書を交付するために281億円の税金を投じている。 9月時点で、マイナ保険証に登録していない人は4割に上る。少なくとも4700万人には...残り 1528/2994 文字
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