情報社会論が専門の社会学者・西田亮介さん=写真=が、最近よく各紙で見かける、エピソードやナラティブ(物語)重視の「エモい記事」について論じた寄稿に、賛否や異論など様々な反応が寄せられている。〈3月29日配信「その『エモい記事』いりますか 苦悩する新聞への苦言と変化への提言」〉

 西田さんがやり玉にあげるのは「わが町のちょっとイイ話」の類いの、データや根拠を前面に出さず、何かを明確に批判したり賛同したりするわけでもない、記者目線のエピソード重視の記事。「書かれたテキストをどう受け取るかは読者次第」「厳密にカテゴライズするのも難しい」としつつも、「現代のメディア環境における新聞の役割に関わる重大な問題」として、批判的に取り上げた。

 ネットやSNS、AIによって情報があふれかえる今、決して安価とはいえないコストを払って読む新聞の役割は、真偽不明の大量の情報を分析して意味を析出し、妥当な中身や量にまとめて示すことでは、と西田さん。エピソード型の記事が全て悪いわけではないが、必要以上に紙面を割いたり経営資源を注いだりすることで、新聞が本来はたすべき機能を担う記事が「書かれていない」状況になってはいないか、との危惧を抱く。

 この寄稿に朝日新聞デジタル上で識者らが寄せたコメントや読者からの反響の多さは想像を超えた。メディアの現状への社会の関心の高さを感じる。ネット時代の新聞のあり方は簡単に答えが出ない難題だ。編集部も、また私自身も悩みながら、模索を続けたい。(吉田貴文)

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