政府が「スタートアップ育成5か年計画」のもと、多くのスタートアップ企業やユニコーン企業の創出を目指す中、女性起業家への「セクハラ」が問題になっている。7月に発表されたスタートアップ業界での調査によると、1年以内にセクハラを経験した女性起業家は、52.4%にのぼった。
【映像】「セクハラなんて可愛く思える位、エグい経験するのが会社経営…」物議となった松本友樹氏の投稿全文
例として、「ビジネスパートナーを紹介すると呼び出されたが合コンだった」「投資の見返りに肉体関係を持ちかけられた」などがある。新規事業の立ち上げを目指す起業家にとって、投資家は必要不可欠な存在だ。その立場を利用してのセクハラに反発の声が絶えない。。『ABEMA Prime』では、セクハラ被害を明かした女性起業家と、それに疑問を呈する会社社長とともに、実態と解決策を考えた。
■打ち上げに誘われるも二人きり…断るとセクハラメッセージ
女性起業家105人を対象とした、アイリーニ・マネジメント・スクールの調査によると、過去1年間のセクハラ被害の経験は、「ある」52.4%、「なし」46.7%となった。また、誰からセクハラを受けたか(複数回答可)は、投資家44.4%、顧客・取引先33.3%、メンター・アドバイザー24.7%、起業支援団体の関係者23.5%、起業家21.0%との回答だった。 社会活動家でソーシャルデザイナーの田中美咲氏は、3度起業した経験から「セクハラが日常茶飯事だ」とXに投稿した。田中氏の被害は「創業したてで、会社を守らなければならない状況で起きたため、当時はセクハラかわからなかった」、「納品後の打ち上げに誘われて、みんなで行くものと思っていたら、実は2人きりだった。気持ちが悪くなる長文メッセージが送られてくることもあった」と振り返る。悩んでも相談相手は居なかった。「当時は弁護士費用もない。会社の上司であれば、同期や人事に相談できるが、有名企業の事業部長以上だと、どこに相談すればいいかわからず、チームメンバーへの共有で終わった」。
言い出せない背景には、相手との力関係もあり、「重要なクライアントで、断ると事業継続が成り立たない。チームメンバーの生活維持のために断り切れなかった」。ミーティングといった公衆の面前でのセクハラ発言はなかったが、「個別メッセージになった途端に来た」。最終的には「次年度契約を結ばなかった」と話す。
田中氏の友人でも、「投資家からホテルに誘われたり、タクシーに投げ込まれたりした」ケースが存在する。また最近、女性起業家へのセクハラが話題になっている状況を受け、「投資家から『僕たちの関係は、こういうことじゃないよね』とクギを刺されている子」も複数いる。周囲は「年上男性が高確率」であるが、「年齢に関係なく、バイアスがかかった発言や、不適切発言はよくされる。『女性なのに』『女性だから』と枕詞を付ける人は多い」と述べた。■「セクハラなんて可愛く思える位、エグい経験するのが会社経営…」物議となった投稿
セクハラ被害を訴える女性起業家がいる一方で、それに異論を投げかける人もいる。グッドライフ代表の松本友樹氏は、「厳しい言い方になるけど、これで諦めるなら、起業家には向いてないんじゃないかと。セクハラなんて可愛く思える位、エグい経験するのが会社経営です」などとXに投稿して、物議を醸した。改めて投稿の意図を問われた松本氏は、「大前提としてセクハラを肯定していない」としつつ、「経営者は従業員の雇用やサービスを守る責任がある。たとえ経営者がハラスメント被害にあっても、後任を決めずに退職すれば、顧客や企業が困る。セクハラ被害者の精神的ダメージも理解できるが、後任を決めずに経営を諦める理由にはならない」と持論を述べる。
セクハラ以上の「エグい経験」とは、何を指しているのか。「主観に個人差はあるが、セクハラと比較できるようなものではない。このような発言をしたのは、失敗だったと思っている」と反省の念を示す。
では、セクハラ問題に、松本氏自身はどう対処すべきだと考えるか。「不動産販売業で、投資家の顧客とやりとりしていると、社会的地位かを理由にリスクを怖がる傾向がある。『セクハラがリスクではない』と問題視されるような環境整備が大事なのではないか」と答えた。
モデル・ラジオナビゲーターで、経営者でもある長谷川ミラ氏は、松本氏の主張を聞いて、「今からでも遅くない。『考えが及ばなかった』と投稿すべきだ」といい、「そのまま投稿が残ることで、賛同の声が大きくなり、私たちは声を上げにくくなる。もし反省の思いがあるなら、追記したらどうか」と提案した。この呼びかけに松本氏は、「そうですね、はい」と答えた。■女性起業家へのセクハラで経済的損失
Tokyo Woman in VC「国内女性VCと女性起業家に関するレポート」によると、国内VC(ベンチャーキャピタル)業界における女性意思決定者の比率は、2020年の2.4%から、5.3%、6.6%と年々増加し、2023年は7.4%となっている。女性起業家へのセクハラで、経済的損失も発生する。エコシステムの信頼性低下や、個々の起業家の成功阻害、優秀な人材の流出、イノベーションの機会損失などが理由となり、東京都の年間経済損失(試算)は48億円〜1870億円にのぼる。
長谷川氏は「ロールモデルとなる女性起業家がそれほど多くない現状が、セクハラの相談相手がわからないことにつながる」といい、「女性起業家のブームは始まったばかりだ。自分たちが年長者になった時には、下の年代をどう守れるか考えたい」と主張。同時に社会起業家として「食っていくので精いっぱい」な現状も語る。「声を上げるのはハードルが高い。できる人ができる範囲で言っていくのが大切だ」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
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