「10年間で800人以上の女性に実施した処女卒業サポートの経験をいかして痛くないロストバージンを提供させていただきます」と語るXアカウント、「ロストバージンカフェ」が昨年話題になった。「処女喪失カウンセラー」の肩書で活動するこのアカウント以外にも、「性体験がない女性をサポートする」というアカウントは数多く、批判の声も上がっている。
【映像】“ロストバージン”を謳うアカウントに批判の声
こうしたアカウントが増える背景には、男女ともにいつしか植え付けられた「性体験がないと恥ずかしい」という価値観があるという。不安を抱える人も多い中、『ABEMA Prime』ではアカウント運営者と女性当事者の話を交え考えた。
■SNSのアカ主「マッサージに近い」 法的な問題は?
「ロストバージンカフェ」アカ主のまさと氏(30代後半)は、普段はコンサルタント業を営んでいるという。性経験がなく悩む友人の話をきっかけに、2013年から活動を開始。「処女の女性との性行為経験がない男性と比べた時には、私がサポートしたほうが少ない痛みで卒業できる」と説明する。
その際に言われるのは、「よく『病院の先生みたい』だと。性的な触り方というより、下腹部の周りを伸ばしながら筋肉を緩めて、緊張を取り挿入する。マッサージに近い」。ホテル代は女性側が負担するが、それ以外に料金はかからない。定期的に性病検査を行い、コンドームの着用や、女性側のピル服用など、避妊・性病対策も行っていると語る。こうした行為は、法的に問題ないのか。グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士によると、SNSで性体験のない女性を誘って性行為する場合、有償だと「売春防止法違反」になるが、今回は無償なので違法性はないという。売春の定義は、売春防止法第二条で「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定められている。なお、性病にかかっていることを知りながら女性にうつした場合は「傷害罪」に当たる可能性がある。
YouTubeにはサポートを受けたという女性のインタビューも載せるなど、真面目に思える活動だが、自身の性欲を満たしたい一面もあるのではないか。まさと氏に問うと、「目的達成には、私の性欲もある程度必要で、そこはお互い様だ。(やりたいだけという声は)否定するところはない」と答えた。
■48歳まで未経験「このまま死んでいく?」「自分に問題があるのでは」
ライターのmirae(みれ)さんは、48歳まで未経験だったことで、様々なコンプレックスを抱えていたという。10代のころは、両親が真面目で性に関する話題はタブーとなっていて、義務教育でも性について学ぶことがなかった。ある時、父親のAVをたまたま見てしまい、リアルな性行為は気持ち悪いと感じる。その一方で、映画や漫画などの性行為には興奮していたという。性的な興味は強かったが、オタク趣味や仕事に没頭し、性欲はセルフプレジャー(自慰行為)で解消できていたそうだ。
しかし、35歳あたりから「このまま誰とも付き合わず、セックスもせず死んでいくのか」と思い婚活を始めたが、実らなかった。「40歳を過ぎて『男性と付き合えないのは、自分に問題があるのでは』と思うようになった。結婚して子どもがいる知人もいるのに、そういうことができない自分が恥ずかしく、周囲に知られず経験したいと思うようになった」。趣味や仕事に没頭しているときは忘れられるが、「ふとした瞬間に寂しいと思った」と語る。miraeさんの転機は、メンタル面で受診していた女性カウンセラーから、「プロのセラピストなら安心できるのでは」と、女性用風俗を勧められたこと。「男性セラピストに優しくされて安心し、(本番行為は無いが)肌のふれあいも体験できた。女性として扱ってもらえて自信を持てたので、出会い系アプリを始めて、知り合った人とコミュニケーションを取り、初体験をした」。
初体験によって、「やっと肩の荷を下ろせた」と思えたという。「自信が付いて、出会いにも積極的になった。自分としてはよかったと思っている」と語る。
■女性用風俗店セラピスト「性欲ではないところで女性は悩んでいる」
性体験がない女性のための風俗「ムツゴト」の男性セラピスト・カオル氏は、「10年以上前、mixiでカウンセリングのコミュニティーを運営していた時に、よく処女の方から性的な悩みを受けていた」ことが、女性用風俗を始めたきっかけとなった。「鹿児島から東京に会いに来た人もいて、悩みの深さがわかり、『手助けしたい』と合法的な店作りを決めた」と説明する。
ムツゴトは2015年から運営(無店舗型性風俗特殊営業)し、男性セラピストがスローな指入れで「痛くない初体験」を提供している。カウンセリングをして、安心感を感じてもらってからセッションへ移り、料金は3時間3万6000円、5時間6万0000円。本番行為、痛いこと、汚いことは禁止している。大学生から60代まで様々な年代が利用し、一番多いのが「29歳」「39歳」「49歳」だそうだ。「節目の年齢に強迫観念から訪れる。男性は風俗を『性欲処理の場』と思うが、女性は性欲が理由ではなく、『このままでいいのか』と悩んで来る人が多い」と明かす。
客層は「すごくキレイで彼氏がいそうな人もいる。容姿は全く関係ない」という。「女性はセックスしようと思えば、街でのナンパなど男性よりは簡単だろう。しかし、そこには怖さなどの感情が絡まる。単純なする・しないや、美醜の問題ではない」とした。
性体験のない未婚女性の割合は、18〜34歳で49.4%。その内訳は、18〜19歳が78%、20〜24歳が52.6%、25〜29歳が35%、30〜34歳が39.7%となっている(2021年、国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査より)。
社会学者で立命館大学准教授の富永京子氏は、カオル氏の話から「節目の年に『経験したい』と感じるのは切ない」と語る。「ある種、年齢に縛られざるを得ない女性の意識を感じる。縛られている人に『年齢は関係ない』と言っても、なかなか理解してもらえない」と考察する。
miraeさんは「性のコンプレックスについて、リアルな友人と話す機会もなかった」と半生を振り返る。「プロのセラピストには、オープンで話しやすかった。周囲が結婚したり子どもができたりと、ライフステージが変われば、友達にもそういう話はできなくなってしまう」。
また、こうした場で話すのは、「悩んでいるのは、あなただけじゃない」と呼びかけるため。「悩んでいる人は、きっと『自分だけが経験していない』と思っているが、みんなオープンに話さないだけで、実際はすごく多い。私のような人もいるので、深く悩まずに、もし相談という形でもできる場があれば、してほしい」と伝えた。(『ABEMA Prime』より)
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