創立120年を超える東京女子医科大学の不透明な資金の流れが問題となり、創立者一族の岩本絹子理事長が解任されました。
第三者委員会は、岩本前理事長の『一強体制』が問題の背景にあったと指摘しています。
■創立者一族の岩本氏 理事長解任 第三者委は「適格性に疑問」
東京女子医科大学は、新宿区にある私立大学で、女性のみに医学教育を行う国内唯一の医学部を持つ大学です。
2023年5月1日時点で、学生数は1363人、教職員や研修生は5735人です。
1981年に、産婦人科医院を開設し、長年、開業医として働いてきました。
2013年に、同窓会組織『至誠会』の代表理事に就任。
2014年に、東京女子医大の副理事長になり、
2019年に、理事長に就任しました。 歴代の理事長は、これまで6人です。
2代目を除いて、6人中5人が創立者一族です。 東京女子医大は、4月に第三者委員会を設置して、8月2日に報告書を公表しました。 「そもそも、医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのか、疑問と言わざるを得ない」としています。 先週水曜日に、臨時理事会が開かれ、第三者委員会の報告書を受けて、岩本氏の理事長職解任を賛成多数で決定しました。 東京女子医大には、国からの補助金が出ています。
2023年度は、約20億円です。 次のページは ■推薦入試 寄付額で加点 順位逆転で推薦受けられない受験生も
■推薦入試 寄付額で加点 順位逆転で推薦受けられない受験生も
理事長が解任された東京女子医大について、第三者委員会の報告書で判明した実態です。
東京女子医大の推薦入試は、2018年に、岩本氏らの主導で、親族に卒業生がいる受験生を対象に大学の同窓会組織『至誠会』の推薦枠を導入しました。
文部科学省は、私立大学の入学者選抜において、入学に関する寄付金などの受け取りを禁止すると定めています。 しかし、受験生側から至誠会や大学へ、2020年度〜2023年度に合計5510万円の寄付があり、そのうち3520万円は、面接試験が行われるまでの2カ月の間に寄付されていました。 2019年に実施された推薦入試では、順位が7位だったAさんは、寄付の実績がなく、8位だったBさんは、700万円の寄付をしていました。 採点表には寄付の項目があり、Bさんの寄付の項目の点数が加点されたことで、AさんとBさんの順位が逆転しました。 結果的に、Aさんは推薦を受けられませんでした。 第三者委員会は、「至誠会が受験生の推薦を行う際、寄付を考慮していたと認定せざるを得ない」と指摘しました。 次のページは ■大学内の昇進は「至誠会ポイント」で評価
■大学内の昇進は「至誠会ポイント」で評価
大学内での昇進にも寄付が影響していました。
『至誠会ポイント』というものがあります。
寄付を含む至誠会での活動実績をポイント化したもので、東京女子医大で教員として勤務する卒業生の昇進などを評価する要素になっていました。
●寄付は、10万円につき、0.5点
●総会や会合などへの出席は、1回につき、0.5点
などです。 しかし、点数基準は開示されず、何ポイント集めれば昇進が可能になるかも不明のまま運用されていました。 「ポイントが足りないと昇進ができないと、至誠会から言われた。歯向かうのは得策ではないと言われ、納得できなかったが、ポイント不足分を寄付した」 『あなたたち医者なんだからお金あるでしょ』と、強い口調でスピーチしていて、非常に脅威に感じた」 アンケートの声「金なければ昇格できない」
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■岩本氏 経営改革で人件費・物資削減も自身の報酬は増■岩本氏 経営改革で人件費・物資削減も自身の報酬は増
さらに、第三者委員会が指摘した、岩本氏の『金銭に対する執着心』です。
2014年2月、東京女子医大病院で、子どもへの使用が原則禁止されている麻酔薬を、2歳の男の子に投与し、男の子が死亡するという事件が起きました。
この事件を受けて、患者数が減少し、特定機能病院の承認が取り消されるなどしたため、経営状況が悪化しました。
この状況で、岩本氏が進めた財務改善です。岩本氏は、この事件が起きた年の12月に、東京女子医大の副理事長に就任、同時に経営面を統括する経営統括理事を兼務しました。 報告書では、岩本氏が進めた財務改善は、
「現場の人員や人件費を削減するもので、見方によっては立場の弱い、現場の教職員を犠牲にするもの」だったと指摘されています。 教職員などの数です。
岩本氏が副理事長に就任した2014年度は7559人でしたが、2023年度は5735人と、約1800人以上減っています。 「岩本氏の大学運営は、人を大切にしないことが一番の問題」
「経営改善とうたい、人件費・物資の削減のみを推し進めており、将来への投資を行っていない」という声があります。 2021年7月には、PICU=小児集中治療室の運用が始まりましたが、わずか7カ月で停止しています。 運用停止の原因について、報告書では、
「岩本氏の重大な経営判断の誤りにある」
「岩本氏にとって、目先においてもうかるか否かが最優先事項であった」と指摘しています。 こうした削減の中で、岩本氏の報酬は増えています。
副理事長に就任した直後の2015年度は1847万円でしたが、2023年度には3178万円、増加率は約72%です。 報告書は、
「自分自身の報酬には甘い体質。金銭に対する執着心が見受けられる」
と指摘しています。 「2019年に岩本氏が理事長に就いて、状況が一変した。岩本氏は全権を一手に掌握して、岩本一強体制を構築していったとみている」
としています。 第三者委員会は調査の過程で、経営陣らの意に沿わない者を狙い撃ちしたような懲戒処分などの疑義を把握しました。
病院や臨床を担う病院長理事が、医療現場に根差した意見をあげましたが、岩本氏の反感を買い、報復的措置を受けて、2022年に病院を追われたということです。 第三者委員会のアンケートによると、『大学運営について、批判や問題提起をする意見でも自由に主張することができるか』という質問に、「全く思わない」が51.3%、「あまりそう思わない」が28.1%でした。 「現体制になってから優秀な人材が退職した。意に反する者は皆異動させられてしまうという、現体制では将来性が無いという理由が大半」
という声もありました。 (「羽鳥慎一モーニングショー」2024年8月14日放送分より) この記事の写真を見る(30枚)
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