見知らぬ男性同士が出会いを求め、性行為にまでおよぶ場所を「ハッテン場」という。今なお一般社会では出会いが限られるゲイ同士が、同じ目的のもとで集う場を求めてもいる。この場所が公共空間であることも多く、問題視されている。『ABEMA Prime』では、実際にハッテン場に出向き取材してきたライターと、公衆浴場の関係者を呼び、問題点を考えた。
【映像】ゲイライターが紹介する「ゲイサウナの見分け方」
■「ハッテン場」が求められる背景…恋愛へのハードルも?近年に入り、同性婚などについても議論されることが増えているが、今でもハッテン場は存在する。自身もゲイでライターのサムソン高橋氏は、当事者として世界のハッテン場を取材してきた。「まずゲイは普通の生活で恋愛関係に発展することがない。全くゼロとは言わないがとても厳しい。普通の人なら職場や学校で恋愛関係に発展していくこともあるが、ゲイはそれがほとんど厳しい。だからハッテン場や限られた場所で『ここなら自由に恋愛ができる』と、一種の文化として確立されてきた」と説明した。ハッテン場には2つのパターンがあり、公園や公衆トイレ、公衆浴場や映画館など公共的な空間を転用する「転用ハッテン場」と、奨励するために作られ誘客から金を取る「専用ハッテン場」がある。サムソン氏が行く場所は専用ハッテン場だが、表向きはサウナや宿泊設備という名目で出店しているという。法的には「一般的な風俗と同じでグレー」だという。
■銭湯・サウナでの性行為は罪に当たる可能性大公共的な場で性行為におよべば、罪に問われる可能性は高い。深澤諭史弁護士は公然わいせつ罪と建造物侵入罪の2つについて指摘。前者は不特定または多人数に見られる可能性があれば成立し、管理者が黙認した場合も同様。また後者は、管理者が性的接触目的の立ち入りを許可していないことが、法に触れるという見解だ。
ハッテン場として使用されてしまう場所として多いのが公衆浴場だ。全国浴場組合の副理事長で都内に2店の銭湯を経営する佐伯雅斗氏は、公衆浴場の経営者が黙認するケースは「まず、ないと思う」という。「公衆浴場組合は全国1600軒以上あるが、組合加入率がほぼ99パーセントという、ものすごい加入率。サウナやスーパー銭湯は違うが、逐一、必ず店の情報が上がってきて、これが問題になることはまずない。銭湯はほぼ家族経営。そこで何かいかがわしいことが一瞬でも行われていたのを黙認したら、生活が成り立たない。断固としてそこには立ち向かってしまうので、疑わしくても罰してしまうぐらいな勢い」と話す。。「例えば東京都は『家族風呂』の設置が認められていない。地方にはあるが、これは各都道府県によって条例が違うから。東京都はそういういかがわしい使い方をされることが考えられるから」と、浴場に個室を作らない理由を述べた。
一方でサムソン氏は、大阪にある銭湯がハッテン場となってしまったものの、そのまま店主が黙認したケースもあったという。「排除してしまったら、経営が成り立たないからと。半ば公に認めてしまっているケースも1軒だけある」と述べた。
■経営難の温泉施設で起きた事態が閉店への“トドメ”に全国的にも大きなニュースになったのが、鹿児島県で起きたケースだ。今年3月に倒産した公衆浴場も、転用ハッテン場になっていた。燃料費の高騰などで経営に苦しんでいたところ、転用ハッテン場となり男性客同士の性行為が相次いでしまったことで、一般客の足も遠のいたというケースだ。佐伯氏は倒産の理由について「(ハッテン場になったことが)1つの原因であるというお話で、これだけがピックアップされたことに関しては困っている状況ではある」とした上で、「あちらの銭湯はかなり大きい。家族経営からちょっと外れた大きさがある。そうすると従業員もアルバイトなどになり、見て見ぬふりをしていた可能性もある。性行為だけじゃなくても、他のどんな些細なお客様同士の争いも、 最初にまずきっちり店側が態度を示さないと、それが広がってからでは遅いこともある」とした。
■大都市では存続も地方では数を減らし続ける専用ハッテン場SNSなど出会いのきっかけも増えた中、専用ハッテン場の数は減りつつある。サムソン氏によれば「ゲイ専用のちゃんとしたハッテン場は、大都市にしかない。自分の知る限り、東京、大阪、名古屋、あとは博多ぐらい。札幌あたりの大都市でも、ゲイ専用のハッテン場はなくなっていて、地方にはない」のが現状だ。逆にSNSを活用して、小規模でも転用ハッテン場と設定したところに人が集まるという環境も出来上がっている。
この現状に、パックンは「80年代からゲイ社会の変化を見てきている。昔は本当に隠れて行うしかなかった時代から、少なくとも割とオープンにしているし、少なくとも西洋はシフトしている。一時期はラブホテルは男同士では入れないとか、そういう縛りとかあって、ハッテン場に頼るしかなかったが、今であれば出会いはハッテン場でも、行為をする場所は他のところにするなど迷惑をかけない形はできないものか」と提案した。
■公衆浴場マナーのあり方「裸の付き合い」のルールは時としてハッテン場にもなってしまうケースもある公衆浴場だが、古くから「裸の付き合い」という言葉もあり、コミュニケーションの場になってきた背景もある。パックンは「僕個人は全然平気。地方の銭湯を回って、地元の方との交流の場を結構持っている。ただ、それを嫌がる方がいるのは間違いないと思うので、やめた方がいいと思う。裸の付き合いは知り合ってから」と述べた。
コラムニストでゲイの小原ブラス氏は「自分は裸で歩いているのも嫌で、温泉とか銭湯で水着とかも付けずに裸で歩いているのを見ると、なんか笑ってしまう。同性でも裸でOKというのはすごく違和感がある」と述べた。またAV女優の紗倉まなは「銭湯に行って嫌な思いをしたみたいなことはまるでないが、個性を出す場所ではなくて、リラックスしたり、洗いに来る場所。だからそれ以外の何かプラス日常的な会話や、それこそナンパとかそういう場ではない。よく美容院とかでも話しかけないでほしい人はこれをつけるとか、一目瞭然で自分の意思を伝えられるものがあれば」と語った。
(『ABEMA Prime』より)
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