旧優生保護法(1948〜96年)下で障害を理由に不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、東京都の西スミ子さん(77)が国に損害賠償を求めた訴訟は31日、東京地裁(片山健裁判長)で和解が成立した。国が和解金1650万円を支払う。旧法を違憲とし、国の賠償責任を認めた7月3日の最高裁判決以降、同種訴訟で和解が成立したのは初めて。

◆和解を急いだ背景は

支援者らにオンラインで和解の成立を報告する西スミ子さん=31日、東京都内で(弁護団提供)

 弁護団によると、西さんの訴訟は9月に次回の期日が予定されていたが、本人の体調が悪く、和解を急ぐ方針を決めたという。  和解の成立後、西さんは支援者へのオンライン報告会で「とてもうれしい。皆さんのおかげです。一生懸命、また生きていこうと思います」と力を込めた。

◆岸田政権は速やかに和解によって解決を図る方針

 西さんは生後間もなくはしかにかかり、脳性まひが残った。初潮を迎えた14歳のころ、入所先の医療施設から「生理がなくなるから」とだけ説明され、不妊手術を受けた。交際相手との結婚を控えていた20代後半のとき、手術を受けた病院を訪ね、子どもを産めない体になったと初めて知った。2022年9月に提訴していた。  旧法を巡っては、被害者ら39人が全国12の地裁・支部に提訴。うち5件の訴訟で、最高裁大法廷は国の賠償責任を認める判決を言い渡した。岸田文雄首相は各地の原告らに謝罪し、継続中の訴訟は速やかに和解によって解決を図る方針を示した。  弁護団は、他の訴訟での和解に向けた協議を政府側と続けており、今夏中に和解内容についての基本合意を目指す。関哉直人弁護士は「高齢の当事者が元気なうちに解決できるよう進めたい」と話した。(太田理英子) 

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