「あっ! 犬の声が聞こえる」
7月3日朝、小学生の女子3人が鳴き声に気づいた。
「クンクン」とかすかな声。足元の側溝にかぶせられた網状のふたの下で、黒い影が動いた。
犬を見つけた3人は、高知県四万十市の具同小学校5年の前田七海さん(10)、杉本琴海さん(10)、門田芽依さん(11)。ランドセルを背負って登校の途中だった。
「かわいそう」
そう思った3人は、犬を助け出すことにした。
「お父さん、来て来て」。前田さんは自宅の父を呼びに行った。
拓郎さん(44)が駆けつけ、金属製のふたを開け、泥だらけになっていた犬を助け上げた。
牛乳を飲ませたあと、中村署に連絡した。
この犬は、地元の小料理店「昭和ブギウギ食堂のらくろ」の看板犬だった。
犬種はボストンテリア(オス、16)で、ブギーという名前だ。
人間で言えば80歳ほどで、白内障で目が見えず、耳も不自由。1日午後10時半ごろから行方不明になっていた。
飼い主の小寺孝治さん、安奈さん夫妻、長女のコナツさん(10)は、近くの川や住宅街を探し回っていた。SNSでブギーの発見と保護を呼びかけたが、見つからなかった。
ブギーが見つかった側溝は、小寺さんの自宅から約500㍍の住宅街だった。自宅を出てすぐに側溝に迷い込み、出られなくなったようだ。
小寺さん夫妻は中村署で3日朝、ブギーと再会できた。
2人は「足が震えていたけれど、食欲もあり、元気。小学生が気づいてくれて良かった。本当に奇跡だと思います」と涙ぐんだ。
飼い犬を必死に捜していた長女のコナツさんは、ブギーを見つけた3人と同じ小学校に通う。前田さんはクラスメートだった。
「コナツちゃんの家の犬と知ってびっくりです」と前田さん。
コナツさんは「ブギーが家にいない日はとてもさびしかった。仲良しの友だち3人が見つけてくれて本当にうれしい」。そう言って、愛犬を抱きしめた。
前田さんたち3人の「命の連係プレー」は小学校の校内放送で紹介された。(フリーライター・笠原雅俊)
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