「あっ! 犬の声が聞こえる」

 7月3日朝、小学生の女子3人が鳴き声に気づいた。

 「クンクン」とかすかな声。足元の側溝にかぶせられた網状のふたの下で、黒い影が動いた。

 犬を見つけた3人は、高知県四万十市の具同小学校5年の前田七海さん(10)、杉本琴海さん(10)、門田芽依さん(11)。ランドセルを背負って登校の途中だった。

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ブギーを発見した前田七海さん(右)、門田芽依さん(中央)、杉本琴海さん=2024年7月9日、高知県四万十市渡川、笠原雅俊撮影

 「かわいそう」

 そう思った3人は、犬を助け出すことにした。

 「お父さん、来て来て」。前田さんは自宅の父を呼びに行った。

 拓郎さん(44)が駆けつけ、金属製のふたを開け、泥だらけになっていた犬を助け上げた。

 牛乳を飲ませたあと、中村署に連絡した。

 この犬は、地元の小料理店「昭和ブギウギ食堂のらくろ」の看板犬だった。

 犬種はボストンテリア(オス、16)で、ブギーという名前だ。

 人間で言えば80歳ほどで、白内障で目が見えず、耳も不自由。1日午後10時半ごろから行方不明になっていた。

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無事に保護されたブギー=2024年7月9日、高知県四万十市具同、笠原雅俊撮影

 飼い主の小寺孝治さん、安奈さん夫妻、長女のコナツさん(10)は、近くの川や住宅街を探し回っていた。SNSでブギーの発見と保護を呼びかけたが、見つからなかった。

 ブギーが見つかった側溝は、小寺さんの自宅から約500㍍の住宅街だった。自宅を出てすぐに側溝に迷い込み、出られなくなったようだ。

 小寺さん夫妻は中村署で3日朝、ブギーと再会できた。

 2人は「足が震えていたけれど、食欲もあり、元気。小学生が気づいてくれて良かった。本当に奇跡だと思います」と涙ぐんだ。

 飼い犬を必死に捜していた長女のコナツさんは、ブギーを見つけた3人と同じ小学校に通う。前田さんはクラスメートだった。

 「コナツちゃんの家の犬と知ってびっくりです」と前田さん。

 コナツさんは「ブギーが家にいない日はとてもさびしかった。仲良しの友だち3人が見つけてくれて本当にうれしい」。そう言って、愛犬を抱きしめた。

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ブギーの無事を喜ぶ飼い主の小寺コナツさん=2024年7月9日、高知県四万十市具同、笠原雅俊撮影

 前田さんたち3人の「命の連係プレー」は小学校の校内放送で紹介された。(フリーライター・笠原雅俊)

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連係プレーでブギーを保護した(左列前から)杉本琴海さん、門田芽依さん、前田七海さん。前田さんの父拓郎さん(後列)も協力した=2024年7月9日、高知県四万十市渡川、笠原雅俊撮影
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ブギーが見つかった側溝=2024年7月9日、高知県四万十市渡川、笠原雅俊撮影
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ブギーの無事を喜ぶ飼い主の小寺コナツさん=2024年7月9日、高知県四万十市具同、笠原雅俊撮影
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ブギーの無事を喜ぶ飼い主の小寺コナツさん=2024年7月9日、高知県四万十市具同、笠原雅俊撮影

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