海上自衛隊の潜水士が手当を不正に受給していた問題で、不正額が公表分より約1000万円多い総額5300万円余に上ることが19日、分かった。防衛省は不正を巡って逮捕者が出ていたことも発表しておらず、姿勢に批判が出ている。
同省は同日未明に異例の報道対応を行い、公表内容を修正。三貝哲人事教育局長は「懲戒処分を実施した分だけ公表すればいいと判断ミスをした。把握した全体像をできる限り明らかにすべきだった」と謝罪。その上で「事案を隠蔽(いんぺい)したり、過少に見せたりする意図はなかった」と釈明した。
防衛省は12日に、潜水士62人が「飽和潜水」に関わる潜水手当を総額約4300万円不正受給していたとし、懲戒免職などの処分を公表した。しかし、処分に向けた審理や手続きが進行中の隊員8人と、事案発覚前に依願退職するなどして処分を受けていない隊員6人の不正分が含まれていなかった。不正額は手続き中の8人で計約700万円、退職済みの6人で計約345万円に上る。
同省は退職者からも不正額を回収しており、免職相当と確認すれば支給された退職金についても返納を求める。
逮捕されていたのは、懲戒免職処分を受けた隊員3人と処分前に依願退職した1人で、詐欺などの容疑で昨年11月に警務隊に逮捕されたが、横浜地検横須賀支部が同12月にいずれも不起訴(起訴猶予)にしたという。
警務隊は飽和潜水以外の手当についても調べており、同省は「捜査への影響などを考慮し、積極的な公表は不要と判断した」と説明。公表範囲などの判断は主に同省人事教育局が行ったが、隊員の逮捕や不正に非公表分があることは木原稔防衛相らに報告していなかったという。
海自では19日、辞任した酒井良前海上幕僚長に代わり、斎藤聡海幕長が着任。事務引き継ぎを受けた斎藤氏は「今回のさまざまな不正については、しっかりと対応していきたい」と述べた。
新たに着任し隊員の儀仗(ぎじょう)を受ける斎藤聡海上幕僚長(右から2人目)と辞任した酒井良前海幕長(右端)=19日午前、防衛省
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