取り調べで黙秘を貫いたところ、横浜地検の検事から「ガキ」「うっとうしい」など侮辱されたとして元弁護士の男性が国に1100万円の賠償を求めた訴訟で東京地裁(貝阿弥亮裁判長)は18日、取り調べの違法性を認め、国に110万円を支払うよう命じた。
判決は検事の取り調べが人格権の侵害に当たると認定した。
裁判を起こしたのは元弁護士の江口大和さん。訴状によると、江口さんは2018年、交通死亡事故を巡り関係者に虚偽供述させた犯人隠避教唆容疑で横浜地検特別刑事部に逮捕された。取り調べで容疑を否認し、黙秘権を行使すると告げたにもかかわらず、検事は起訴までの21日間で計56時間の取り調べを行い、「ガキだよね」「お子ちゃま発想」「うっとうしいだけ」などと侮辱する発言を繰り返したとしている。
訴訟で地裁は、一連のやりとりが記録された取り調べの録音・録画データの提出を国側に勧告し、法廷でも上映された。
争点は検事の取り調べで江口さんの黙秘権や人格権が侵害されたといえるかだった。
原告側は、検事が江口さんの弁護士としての能力を執拗に非難するなどし、精神的に圧迫することで供述を強要しようとしたと主張。尊厳を損なう発言も繰り返され、一連の取り調べは黙秘権や人格権を侵害するもので違法と訴えた。
国側は、黙秘している被疑者に取り調べを続けても直ちに黙秘権の侵害にはならないと反論。江口さんへの取り調べには、真相解明や反省を促すために説得を尽くす「高度の必要性」があり、全体としてみれば社会通念上相当な範囲を逸脱する内容ではなかったとした。
逮捕した容疑者の取り調べの録音・録画は10年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を契機に、警察・検察で試行が始まり、19年の改正刑事訴訟法の施行で制度化された。裁判員裁判の対象事件や検察の独自捜査事件が対象となっている。
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