10日午後2時すぎ、富士山の山頂の静岡県側にある剣ヶ峰付近で、男性の登山者が倒れているのを別の登山者が見つけて警察に通報しました。

警察によりますと男性は70代で、山頂付近から火口側に5メートルほど転落して意識不明の状態だったということで、その後死亡が確認されました。

通報があった時、山頂付近は風が強く吹いていて雨も降っていたということで、遺体には滑落してできたとみられる外傷があったということです。

一方、元祖7合目付近の登山道でも11日午前4時半すぎ、60代の男性の登山者が意識不明の状態で倒れているのが見つかり、その後死亡が確認されました。

警察は亡くなった2人の身元の確認を進めるとともに、事故の状況を詳しく調べています。

また、御殿場口の登山道の8合目付近でも、10日午後5時すぎに登山者の男性が動けなくなっているという通報があり、心肺停止の状態で見つかりました。

警察によりますと男性は東京 狛江市の小野文彦さん(77)で、11日午後、死亡が確認されました。

死亡した3人はそれぞれ1人で登山していたとみられるということです。

警察は「山の天候は変わりやすいので、無理な登山は控えてほしい」と注意を呼びかけています。

10日の富士山の様子は

事故が相次いだ10日の富士山の様子はどうだったのか。

山頂にある富士山本宮浅間大社の奥宮で住み込みで働いている写真家の植田めぐみさんが、10日午後2時前に富士宮ルートの山頂で撮影した動画では、濃い霧が立ちこめ風が強く吹きつける中で登山している人たちの姿が確認できます。

午後2時すぎには、山頂の剣ヶ峰付近で70代の男性の登山者が倒れているのが見つかった際、植田さんは男性の救助活動に向かいました。

午後2時半前、剣ヶ峰に向かう上り坂で撮影した動画には、辺り一面が霧に包まれて真っ白になっている様子がとらえられています。

植田さんは、山岳ガイドなどと協力して1時間ほど男性の心臓マッサージを続けていましたが、天候がさらに悪化し危険な状況になったため、中断せざるをえなかったということです。

当時の山頂の状況について植田さんは「風速10メートルを超える風が四方八方から吹いていたので、バランスを崩しやすく、砂利も飛んでくるので、目があけられないほどだった」と話していました。

専門家 “悪天候を想定して装備の用意を”

3人の登山者の死亡が確認されたことについて、国内外で山岳ガイドを務める日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長は「山開きがあったからといって、山がおとなしくなったわけではない」と警鐘を鳴らしています。

武川理事長は、この時期の富士山は天候が変わりやすく、荒れた場合には気温が氷点下近くになり、風速は20メートルに達するとして「悪天候になると非常に厳しい環境になることを想定して登山の計画を立て、防寒着や防水性の高い雨具などの装備を用意する必要がある」と話しています。

そのうえで「登山の初心者はこれ以上進んだ場合に危険かどうか、命に関わるかどうかの判断がつかないので、一人や初心者どうしで行ったりするのは避けたほうがよい。山小屋でこの先進んでも大丈夫かどうかを確認しながら進むのが重要だ」と話していました。

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