天皇、皇后両陛下は29日、訪問先の英国から政府専用機で羽田空港に帰国した。晩餐(ばんさん)会ではチャールズ国王との親密なやりとりが話題になり、皇后雅子さまと共に、次世代を担う日英の若者や子どもたちとも交流した。

 訪英を終えた両陛下は帰国と同時に感想を文書で公表。「訪問を通じ、我が国と英国の人々の間で長年にわたって培われてきた友好親善の歩みについて理解を深めることができました」と振り返り、日英の幅広い年代の人々と会う中で両国の友好親善関係が「人々の交流を通じて深まってきたことや、英国の人々が日本に対して温かい気持ちを寄せていただいていることを実感し、うれしく思いました」とつづった。

 両陛下は国賓として招待され、25日には国王ご夫妻と馬車に乗ってパレード。晩餐会では、国王がハローキティやポケモンなど若者に人気の日本のカルチャーに触れ、陛下は英国で人気のSFドラマに言及するなど、互いの国への親愛の情を感じるユーモアに富んだやりとりが披露された。敵対した先の大戦での教訓にも双方が言及し、陛下は苦難を経て連携を強める日英関係を「裾野が広がる雄大な山」と例え、「先人が踏み固めた道を頼りに」「更に高みに登る機会を得ている我々は幸運と言えるでしょう」と呼びかけ、喝采を浴びた。

 両陛下は感想の中で、ガンの治療を続ける中で両陛下をもてなしたチャールズ国王と、妻のカミラ王妃に対し、「心をこめてご準備くださり、すばらしいおもてなしをいただいた」と深い感謝の意を表した。

 適応障害から回復途上の皇后さまは、滞在中も体調を整え、予定していた行事全てに出席した。滞在最終日の28日には、両陛下ともに留学経験のあるオックスフォード大に足を運んだ。

 両陛下は、訪問を通じ、「日本と英国の友好親善と協力関係が一層進展することとなればうれしく思います」と締めくくった。(中田絢子)

 海外王室事情に詳しい関東学院大の君塚直隆教授の話 国賓としての今回の英国訪問は、未来志向の両国関係を確認し合うものになった。戦争を忘れることはないが、環境問題をはじめとした地球規模の課題解決のため、両国が手を取り合って進むということが強調された。

 昭和天皇や上皇さまができなかった英国留学を経験した陛下が、3代目にしてようやく皇室と王室の間に本当の家族のような関係を築いたといえる。

 今後の課題は、長い時間をかけて築いたこの友好関係をいかに次世代に引き継ぐか。日本の皇室も担い手の道筋をつけ、ウィリアム皇太子らより若い世代の王室メンバーに日本を訪れてもらうなど、交流を続けていくことが大切だ。(中田絢子、力丸祥子)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。