本格的な夏はまだですが、すでに熱中症で救急搬送される人が急増しています。この時期は、気温がそれほど高くないにも関わらず、湿度が高いために熱中症になる『梅雨型熱中症』に注意が必要です。
■“熱中症”梅雨入り前の高温多湿は要警戒
全国の熱中症による救急搬送者数です。 6月10日〜16日の1週間で、2485人。 これまでの3〜4倍に急増しました。
熱中症リスクの要因は3つあります。『気温』と『湿度』と『輻射(ふくしゃ)熱』です。『輻射熱』とは、日差しを受けたときに受ける熱や地面、建物、人体などから出ている熱のことです。 熱中症リスクの要因の割合は、『気温』が1、『湿度』が7、『輻射熱』が2で、湿度の影響が大きいです。
熱中症リスクの要因熱中症のリスクを『気温』と『湿度』で見てみます。
気温と湿度が上がれば、熱中症リスクは高くなりますが、気温がそれほど上がらなくても、湿度があると、リスクも高くなります。
例えば、気温が26℃でも湿度が85%あれば熱中症の『警戒』領域です。
都内のクリニックです。6月17日、東京の最高気温は30.5℃、湿度75%で、熱中症リスクは厳重警戒でした。
東京・北区の『いとう王子神谷クリニック』では、この日、熱中症疑いの患者は4人。 60代の主婦は、めまいや倦怠感といった症状で、
「朝涼しくて、汗もかかなかったので、水分をとらないていた。エアコンは苦手で使っていない」と話していました。 40代の熱中症患者です。
倦怠感、下痢、のどの渇きといった症状がありました。
前日16日、最高気温28.7℃、湿度86%のなかで、マンションのエアコンを交換していました。
「汗がだらだら出てきたが、そのうち汗が出なくなり、水分をとっても、のどの渇きが治らなかった」ということで、点滴治療が行われました。
「梅雨の前でも、湿度が高いとじわりじわりと脱水が進み、熱中症になりやすい。梅雨型熱中症といわれている。いつも梅雨入り後に多くなる。熱中症疑いの患者が、今年は前倒しになっている」ということです。 次のページは ■なぜ起こる?梅雨型熱中症 体温下がりにくいワケ■なぜ起こる?梅雨型熱中症 体温下がりにくいワケ
気温がそれほど高くなくても、湿度が高いと『梅雨型熱中症』になるリスクがあります。
通常は、汗をかくと、その汗が蒸発するときに、体の熱が空気中に放散されることで体温が下がります。
しかし、湿度が高いと汗が蒸発できず、体の熱が空気中に放散できないので、体温が下がりません。結果、体内に熱がこもり熱中症になります。
気温35℃、湿度30%では、汗が蒸発し、表面温度は40℃以下でした。
気温35℃、湿度70%では、汗が蒸発しにくく、表面温度が50℃近い部分もあります。
同じ気温でも、湿度が高いと汗が蒸発せず、高温になるということです。
■危険な梅雨型熱中症…気付きにくく対応遅れも梅雨型熱中症は、気付きにくいです。
いとう王子神谷クリニックの伊藤院長によると、「本格的な暑さを迎える前にかかる『梅雨型熱中症』は、本人が熱中症だと気付きにくい。対応が遅れ、来院時には中等症以上になっていることも。発症から来院までに1週間〜10日かかることもある」ということです。 なぜ、対応が遅れるのでしょうか。 1つ目のケース
体がだるいので風邪かと思い、風邪薬や解熱剤を服用して様子見したため、病院での診察までに時間がかかる。 2つ目のケース
体が熱っぽく汗をたくさんかいたので、紅茶で水分補給。しかし、紅茶に含まれるカフェインで、尿の頻度が増え、脱水が進行する。 次のページは ■実録 “梅雨型熱中症” 24℃でも脱水症状に
■実録 “梅雨型熱中症” 24℃でも脱水症状に
いとう王子神谷クリニックで実際にあった『梅雨型熱中症』のケースです。
28歳の女性です。
その日の最高気温は28.7℃。湿度は86%。『暑さ指数』では『厳重警戒』相当でした。女性は、まだ暑くないと感じていたので、エアコンを使っていませんでした。
だんだん脱水状態になっていき、栄養も不足していきました。 水分、ミネラル、ナトリウムなどが不足していたということです。 そして、翌日、体のだるさやめまい、頭痛の症状があり、クリニックを受診。熱中症と診断されました。 56歳の女性です。
夜何度も目覚めて、朝方は寝苦しさを感じました。 前日は、最高気温が24.7℃、湿度は85%で、『暑さ指数』は、『注意』相当でした。 日中は、顔の血色が悪く、ボーッとして、全身にじっとりとした汗をかいていました。
この日は最高気温29℃、湿度は73%。 『暑さ指数』は、『警戒』相当に上がっていました。 女性は前日に、汗から体温が放散されず、体温調節機能が鈍っていた可能性があります。
翌日、気温上昇と多湿で、急激に体調が悪化したとみられるということです。 67歳の女性です。
朝起きるとめまいを感じ、口の中が乾燥していました。
その後、クリニックを受診し、熱中症と診断されました。 前日は、最高気温が24.3℃、湿度は88%で、『暑さ指数』は『注意』相当でした。 1週間ほど前から、連日湿度が高く、気温が25℃前後の日が続いていました。
女性は食欲がなくなりはじめ、体温調節機能が少しずつ乱れてきた可能性があります。 そのため、時間をかけてじわじわ脱水が進行しました。 クリニック受診の前夜は、頻繁に目が覚めトイレに行きました。 そのため、脱水状態に拍車がかかり、症状が強まったということです。 次のページは ■梅雨型熱中症 やるべき対策は?『クーリングシェルター』活用も
■梅雨型熱中症 やるべき対策は?『クーリングシェルター』活用も
帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長で、医師の三宅康史さんに聞いた、梅雨型熱中症の対策です。
屋内の場合は、除湿がポイントです。エアコンで、部屋の温度を28℃以下に、湿度は40〜50%を目安に調整しましょう。
屋外の場合は、汗が体を冷やしてくれないため、魔法瓶タイプの水筒に氷水などを入れておき、こまめに飲みましょう。 2024年から『熱中症特別警戒アラート』がスタートしています。
4月から運用が開始され、過去に例のない危険な暑さによる重大な健康被害のおそれがある場合、前日の午後2時ごろに発表されます。 新たな取り組みも行われています。
イオンモールは、『特別警戒アラート』が発表された時の避難場所『クーリングシェルター』として、登録を進めています。 アラートが発表されている時は、館内アナウンスを行い、共用スペースを休憩場所にします。 (「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年6月20日放送分より)
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