江戸学の深い造詣と生き生きした著述で知られた文芸評論家で神戸大名誉教授の野口武彦(のぐち・たけひこ)さんが9日、老衰のため死去した。86歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。 早稲田大在学中、学生運動のリーダーとして1960年安保闘争に参加した。卒業後に東京大に入り、大学院博士課程を中退。近世日本文学、日本思想史を専門とし、学生時代から小説や論評を発表し、注目された。 80年に「江戸の歴史家」でサントリー学芸賞、85年度には「『源氏物語』を江戸から読む」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。95年に阪神大震災で被災し、「安政江戸地震」などの著作に経験を生かした。「石川淳論」「谷崎潤一郎論」「江戸の兵学思想」など著書多数。 神戸大教授のほか米ハーバード大客員研究員、プリンストン大客員教授を歴任。2010年に髄膜炎、脳梗塞、脳出血を患い、後遺症のため片手での執筆を余儀なくされたが、13年に復帰作「慶喜のカリスマ」を刊行。以後も精力的に活動した。
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