警察庁はトラックやバスといった大型車にオートマチック(AT)限定の免許を2027年にも導入する方針を固めた。大型車にもAT車が普及しつつある一方、免許は運転操作がより複雑なマニュアル(MT)向けに限られ、人材確保のハードルとなっていた。ドライバーの裾野を広げ、物流業界などの人手不足を軽減させる狙いがある。
警察庁が19日からAT限定免許の対象を広げる道路交通法施行規則改正案のパブリックコメントを受け付ける。施行は準中型と中型は26年4月、大型が27年4月を想定している。バス向けの2種は中型が26年4月、大型では27年10月に導入する予定。
大型・中型車は比較的車体価格や修理・維持費が低いMT車が中心だった。近年は性能の向上やドライバーの負担軽減のためAT車の導入が増え始めている。業界団体や警察庁の調査によると、AT車の導入率はトラックで34%(22年時点)、バスで約25%(20年時点)だった。
一方、現行制度で大型・中型の運転免許はMT向けしかない。AT限定の普通免許を持つ人は、中型・大型の教習でMT操作を身につけたうえで合格する必要がある。AT大型・中型免許が導入されれば、MT操作の教習などを受けずに取得できる。
22年の普通免許取得者のうち7割超がAT限定免許だった。業界からは「ドライバーを採用しやすくするためにもAT免許の対象を広げてほしい」という声が上がっていた。
物流業界の人手不足は深刻だ。業界団体によると運転手は30年にピーク時から半減の約51万人となる見込み。NX総合研究所(東京・千代田)の試算では30年度に業界の輸送能力は34%不足する可能性がある。バス業界も運転手確保に苦慮している。
警察庁は業界の要望を受ける形で19年、AT免許の対象拡大へ向けた調査や検討を本格的に始めた。交通に絡む社会問題を議論する国の有識者会議で23年10月、大型への解禁が早急に取り組む課題として議論されたこともあり、導入方針を固めたという。
人手不足に対応するため、ほかの交通政策も見直しが進んでいる。警察庁は4月、効率的な輸送の実現に向け高速道路でのトラックの最高速度を時速80キロから90キロへ引き上げた。
政府は外国人在留資格の特定技能制度にトラックやバス、タクシーなどの「自動車運送業」を追加することを3月に閣議決定。各地の警察では外国人でも受験しやすいように、タクシーやバスの運転手に必要な第2種免許の外国語試験の導入も広がる。
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