マウスの脳にある血管の細胞に蓄積したタンパク質(赤色)=大阪大ウイルス学・木村志保子氏提供・共同

インフルエンザの合併症の一つで死亡することもあるインフルエンザ脳症について、脳の血管にタンパク質がたまり発症することが分かったと、大阪大などのチームが13日までに英科学誌に発表した。タンパク質の蓄積を防ぐと発症を抑えられることも判明、抜本的な治療法の確立につながると期待される。

国立感染症研究所によると、インフルエンザ脳症は意識障害やけいれん、異常行動などを引き起こす。9歳以下が6〜7割を占め、新型コロナなど他のウイルスでも発症する。免疫機能の暴走が原因と考えられていたが、感染から発症までが短時間のため詳しいメカニズムは不明だった。

チームはインフルエンザウイルスの量や感染方法を調整し、ウイルスで脳症を発症するマウスを開発。脳内への異物侵入を防ぐ「血液脳関門」を構成する血管にウイルスが感染しており、時間とともにタンパク質が増えていることを突き止めた。

タンパク質の生産を抑える物質をウイルス感染前にマウスへ投与したところ、脳症が発症しないことも判明。感染後でも症状を抑える効果があったという。インフルエンザの既存薬にもタンパク質がたまるのを抑える機能を持つものがあり、予防や治療に役立つ可能性もある。

一方で投与方法や耐性ウイルスへの対応など課題もある。チームの木村志保子特任助教は「既存薬の実用化と、タンパク質の蓄積予防や排除ができる新薬開発を並行して進めたい」と話した。〔共同〕

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