愛知県内の高速道路を車が1キロにわたって逆走しました。目撃したNEXCOの職員が「いつ事故が起きてもおかしくない状況だった」と話しています。幸い事故にはならなかったということです。今回のケースだけではありません。逆走が多発する各地の道路を取材しました。
■衝突スレスレ…高速道路で1km逆走
6日午後6時すぎ、愛知県の「伊勢湾岸自動車道」下り線を捉えた映像です。
画面右上、前方から一台の白い車が高速の出口で突如スピードを緩めます。すると、インターチェンジの出口から突然、オレンジ色の車が高速道路に進入。「逆走車」です。 逆側の角度から撮影された映像には、画面左上、出口へと向かう分岐付近で、多くの車が相次いでブレーキランプを点灯させているのが分かります。 1台のトラックがスピードを落とし始めると、見えてきたのが、先ほどの「逆走車」。トラックと向かい合うようにして止まっています。逆走車は、出口の分岐付近で止まっているため、高速を下りようとする車は、逆走車を避けるように走行しています。
そして出口付近で止まること、およそ1分。向かい合う形で止まっていたトラックが、右へと避けるように動きます。
するとオレンジ色の車は、本線に進入し、そのまま3車線の真ん中を逆走。正しい進行方向を走っていた車やトラックは、突然現れた逆走車を避けるように、車線変更します。 別のカメラが捉えた映像では、逆走する車を追うように、カメラを動かしているのが分かります。 真ん中の車線を、2台が走行する危険な場面もありました。 そして橋に差し掛かると、逆走車は真ん中の車線から追い越し車線へと移動。カメラが方向を変え、再び逆走車の姿を捉えると、追い越し車線をそのまま直進していきます。
車線を変えてから、およそ30秒後。追い越し車線を走る大型トラックと、あわや正面衝突。トラックは急ブレーキを掛け、その後ろにいた別の大型トラックも停止、ともに身動きが取れない状態になります。 その10秒後、通報を受けた「高速道路交通警察隊」のパトカーが現場に到着。駆け付けた警察官が、逆走車の運転手に話しかけている様子が確認できます。 警察官が誘導し、追い越し車線で鼻を突き合わせていた大型トラックを行かせます。すると、次の瞬間、再び逆走を始めた車。慌てた警察官が走って追い掛けると、逆走車はすぐに停車します。 警察官がそのまま車に乗り込みUターン、正しい進行方向へと移動させ、事なきをえました。1キロにも及んだ逆走、幸い事故はありませんでした。
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■事故にならずに済んだ…3つの要因■事故にならずに済んだ…3つの要因
逆走車を運転していたのは、50代の男性。「NEXCO中日本」によると、出口料金所のETCレーンのバーを押して高速道路内に進入したといいます。監視映像を通して、逆走の一部始終を“リアルタイム”で見ていたNEXCO中日本の職員が、当時の状況を語りました。
NEXCO中日本高速道路ドライブアドバイザー
林修平さん
「前方から多くの車が走ってきて、かなりのスピードで走ってきているなかで、急ハンドルで避けていく状況が見えていましたので、いつ事故が起きてもおかしくない状況だったので、とてもヒヤヒヤしながら心配しながら見ていた」
事故などの大惨事にならずに済んだのには、“3つの要因”があるといいます。
林さん「前方に大型のトラックが止まって、本線に流入するのを阻止していた」
「(追い越し車線で)大型のトラックが『逆走しているよ』ということをパッシングしながら合図をしていただいて、その前方に異変があるということを後続車両に伝えていただく」
「道路を巡回していた警察がたまたま近くにいたので、逆走車が本線に停止してから10秒後ということで非常にスムーズに対応できた」 全国の高速道路での逆走は、2日に1回のペースで発生しているといい、年間200回ほどにも及んでいます。
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■時間帯で一方通行の向きが変わる道路■時間帯で一方通行の向きが変わる道路
逆走は、高速道路だけではありません。
先が見えないほどの長い車の列。その長さは300メートル以上にも。仙台駅にほど近い堤通。大通りの裏にあるこの通りは、毎朝通勤する車で渋滞が起きています。 午前9時〜翌6時は住宅地への一方通行しかし、通勤のピークが過ぎた後、朝と逆方向へ走っていく車が続出。この道路、実は通勤時間帯の午前6時から午前9時までは県庁や仙台駅がある左への一方通行ですが、午前9時以降は住宅地のある右への一方通行に切り替わります。いわゆる“逆転式一方通行”です。
ここで起きている問題があります。
T字路から入ってきて、一歩通行の道を逆走する白い車。正面からは対向車が。ブレーキを掛け停止しますが、そのすぐ後ろに、立て続けに2台の車が逆走。時間によって一方通行の向きが変わるため、逆走が多発する場所となっていました。なかには、ぶつかりそうな距離ですれ違う逆走車や、相次ぐ逆走車にクラクションが鳴らされる場面もありました。
逆走車を見慣れているのか、冷静に注意をする人もいます。
歩行者から注意を受けバックする車。そのまま正しい進行方向に戻り去っていきました。
巡回中のパトカーの前にも、逆走車が…。 警察官「時間帯で(通れない)」
逆走していたドライバーに、警察官が注意を促します。
警察官「お気を付けて、安全運転でどうぞ」
相次ぐ逆走車。近隣住民へのインタビュー中にも…。
近隣住民「(Q.危ない場面とかあります?)あります…あっ、ほらあれ」
「(Q.あっ本当だ。逆走車ですね…)(逆走に)気付かないんだよね、多分ね。どっち通れるか分からないでさ」
相次いで起こる危険な逆走。標識はドライバーからどのように見えているのでしょうか?
ディレクター「標識、ちょっと見えづらいです。近寄らないと分からないです」
標識の文字は近付くまで見えず、ドライバーは直前までどちらに進めばいいのか分かりません。
番組の取材中、午前9時からの1時間で「5台」。この日は少なくとも10台以上の車が逆走していました。逆走車が多発する理由について、近隣住民に聞いてみました。
近隣住民「あそこに病院ができたのが5月で。病院来るのに逆走したりとかね。ここら辺、結構マンションだらけ。こっち(最近)移り住んだ人多いんじゃないですかね。皆さん(一方通行の向きが変わると)分かってないのかもしれない。そもそもね」
周辺には来年ショッピングモールもできる予定で、さらに逆走車が増える可能性があるといいます。
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■動く中央線 衝突ヒヤリ「死んでしまうかも」■動く中央線 衝突ヒヤリ「死んでしまうかも」
逆走は、時間によって車線が変わる道路でも確認できました。
平日の午前9時半前。東京・品川区の「中原街道」を走る、ドライブレコーダーの映像です。 通勤時間帯ということもあり、反対車線は多くの車で混雑しています。 画面上に見えてきたのは、「中央線変移中」と書かれた文字。その横には「中央線」を示す表示があります。 平日の午前7時半から午前9時半までの2時間だけ、片側車線が2車線から「3車線」へ、反対車線が「1車線」へと時間帯によって中央線の位置が変わる“動くセンターライン”。 すると…逆走してきたトラック。前を走っていた車はブレーキランプを点灯させ、左へと避けます。 さらに、続けて白い車も逆走。あわや接触する場面に。 後方を映したドライブレコーダーには前から走ってくる車に気付いたのか、白い逆走車が急いで車線変更していきました。 運転手「恐れというか、驚愕(きょうがく)というか、ビックリというか。数秒後にはもう対向車が…そのまま行けば正面衝突で事故になっちゃうわけで、場合によったら死んでしまうかもしれないなと」
「(Q.対向車の人が気付かず走っていたり、どんな感じでしたか?)キョトンとしていた感じですね、相手(逆走した運転手)の人は。『あっ、あれ?』みたいな『なんだろう?』みたいな、あんまりビックリしている様子はなくて…」 東京・江東区では「右折レーン」から「直進レーン」に変わったことで、直進レーンを走っていた軽自動車が無理やり右折し対向車線から直進してきたバイクと接触する事故も起こりました。
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■静岡でも逆走多発 動く中央線廃止へ■静岡でも逆走多発 動く中央線廃止へ
静岡県の国道でも、“動くセンターライン”で、逆走が多く発生しています。
渋滞緩和のため、国道の2キロの区間で、「午前」と「午後」に中央線の位置が変わります。 画面奥から走ってくる車は突然現れた逆走車に驚いたのか、急いで避けます。 静岡県警によると、2020年からの3年間で起きた人身事故は「77件」。この場所では今年度をめどに「動くセンターライン」を廃止する方針だといいます。(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年6月12日放送分より)
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