岐阜県各務原市で小学3年生の8歳の男の子がごみ収集車にはねられ、頭にケガをする事故があった。静岡県浜松市でも小学4年生の女の子がひかれ死亡する事故が起きるなど、ごみ収集車による事故が相次いでいる。
運転席からの視界はどうなっているのか。一般論ということで、日本サニテイション株式会社の植田健代表取締役にごみ収集車の特徴と業界団体としての対策を聞いた。
ドライバーは遠くを見る習性
ーーごみ収集車の特徴は?
ごみ収集車の運転席は普通のトラックと同じで、後ろの部分だけが違う作りです。ごみ収集車は1日50~100件の回収場所を回り、ごみがあるかないかを確認しながら運転しているので、少し遠くを見る癖があります。
そうした意味では、普通のトラックドライバーとは少し目線が違い、手前を見落とす危険があるのかもしれません。
ーー運転時に気を付けていることは?
4トントラックを運転しているので、座席が高くてアイポイント(目線)が高いため、幼稚園児や小学生がトラックの目の前にいた場合は見えない可能性があります。出発する前に死角になる運転席の下の部分を外から見て、歩行者や障害物がないことを確認してから車を出しています。また、視界を保つためにダッシュボードには物を置かないことを徹底しています。
毎日同じルーティーンをシフトで繰り返す職員もいるので集中力も大事です。弊社では50件の回収を回った後に車を変更して1件大きな粗大ごみを回収しに行くこともあるので、集中力を持続するのは大変な作業になります。
事故や違反で免許取り消しに
高いスキルと専門的な知識が要求される運転従事者には定期的に講習が行われ、事故や違反を起こした場合は免許取り消しの処分になるなど、厳しい世界だと植田氏は話す。
ーーごみ回収中の注意点は?
弊社の場合、車をバックする時は必ず窓を開けて後方を目視で確認することになっています。不安であれば外に出て確認するように言っていて、時間のロスよりも安全確認の方が重要だということを常に共有しています。
住宅地の中を走るのは大変ですが、小さい子供が手を振ってくれてドライバーも振り返すなど嬉しい声も寄せられています。
ーー事故が相次いでいることはどう思う?
とても残念です。運転従事者には毎月のように安全講習が行われています。私やドライバーの長が出席して、その場で聞いたドライバーがヒヤリとしたこと、ハッとしたことをまとめた「ヒヤリハット」報告書などの事例を、社員でシェアすることを業界団体として常にやっています。
ごみ業界はネガティブなイメージがまだ払拭されていません。そんな中、高いスキルと専門的な知識が必要で、事故や違反をしただけで免許取り消しになってしまう程厳しい世界です。この現実はぜひ知っていただきたいと思います。
当たり前を当たり前にやる難しさ
事故対策としては、徹底した安全管理のもとで日々の作業を行っているという。
ーー事故対策は?
安全運転を心掛けることが大切です。運転席の真下と助手席側の後方は死角になります。そのため、ドライバー席から真下が見えるようにミラーを付けているのと、後方はモニターで確認できるようになっています。また、回収作業中の職員の巻き込み事故を防ぐための装置もあります。
そして社員から「ヒヤリハット」体験を抽出して、当たり前のことを当たり前にやる難しさをきちんと社員に伝えて啓発していくことが大事だと思っています。
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