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感染すると手足が壊死して死に至る恐れもある、危険な感染症『劇症型溶連菌』が過去最多のペースで拡大しています。

■特徴は?『劇症型溶連菌』過去最多ペースで増加

 “人食いバクテリア”とも呼ばれる劇症型溶連菌の感染者数です。

 2023年は941人と過去最高でしたが、2024年は5月12日時点で851人。去年の同じ時期に比べて約2.8倍で、過去最多のペースで増えています。

 街で話を聞きました。 50代女性
「最近、20代の娘が、最初は風邪だと思って病院へ行くと、溶連菌に感染していた。劇症型ではないが、治療法がよくわからなかった」 70代男性
「また新しい感染症が現れたなと思う。知らないうちにかかっていたら怖い。ワクチンとかあるのか知りたい」 60代女性
「子どもがかかるイメージだったけど、最近大人もかかると聞いて少し心配。対策とか知りたい」  『溶連菌』は誰でもかかる可能性があります。

 溶連菌は、人ののどなどに保菌(体内に保有しながらも発症していない状態)されて、ほとんど無症状ですが、一定の量を超えると、「のどの痛み」「発熱」「発疹」といった症状が出ます。子どもから大人に感染する場合もあります。

 この溶連菌が突然変異して、急速に増殖するのが、“人食いバクテリア”と呼ばれる『劇症型溶連菌』です。

 『劇症型溶連菌』の症状と特徴です。

 初期症状は、発熱や、手足の腫れや痛みですが、短時間で容体が急変します。敗血症性ショック、手足の壊死、多臓器不全などを引き起こすことがあり、致死率は3割と言われています。特に中高年の感染が多くなっています。

 『劇症型溶連菌』の症状が悪化する速度です。

 朝、足の先端の少しの腫れに気づくと、昼には、ひざまで腫れが進行。夜になると、腫れが紫から黒になり、その後、壊死することもあります。発症後、数十時間で亡くなる場合もあるということです。

 感染力の強い新たな変異株も確認されています。

 ヨーロッパやアメリカで急速に拡大中なのが、新たな変異株「M1UK」という株です。 毒性も感染力も強く、毒素の量が従来株の9倍です。この変異種は、すでに日本に上陸しています。2023年国内で確認され、2024年は感染者の4割以上に拡大していて、置き換わりが進行しています。

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■実録 “人食いバクテリア” 数日で緊急手術

 実際に感染した人のケースを見ていきます。

 40代の男性です。

 初期症状は右手の指の痛みで、通風かと思いそのまま出勤しましたが、仕事中に手全体が腫れ始め、半日ほど経つと強い痛みも出てきました。

 翌日の早朝、駆け込んだ病院で、『劇症型溶連菌感染症』と診断されました。

 すでに腫れは腕まで広がっていて、手術することになりました。医師には「命に関わる病気かもしれない」「腕を切断する可能性もある」と言われたということです。

 手術では、腕の広範囲にメスが入り、医師には、「半日遅ければ手の施しようがなかった」と言われました。数日間の昏睡状態のあと、2カ月入院。 現在は普通に生活しています。 感染経路はわからず、心当たりも全くないということです。  30代の男性です。

 2023年の大晦日、日中、ひざの裏に痛みを感じました。そして、1月1日の深夜(2日に日が変わろうとする頃)、嘔吐・下痢・39℃の熱といった症状が出ました。このときは「ノロウイルスかと思った」そうです。

 2日の夕方には意識がもうろうとなり、救急搬送され、病院で溶連菌に感染と診断されました。ひざ裏にあった湿疹から菌が侵入した可能性があり、即手術、入院となりました。  その後、左足の壊死部分、約5センチ四方を除去しました。腎臓はほぼ機能停止していて、約1カ月間、1日か2日ごとに人工透析を行いました。

 歩けるようになったのは2カ月半後です。医師によると「生きるか死ぬか五分五分」だったということです。

 20代の男性です。

 発症日の日中、バスケットボールをしていると、夕方、右足に少しの痛みと赤みが出てきました。翌日、町のクリニックを受診しましたが、血液検査は行わず、抗生剤と解熱剤をもらいました。

 発症から4日後、右足が赤く腫れ、一部はわずかに紫色になりました。40℃近い熱も出たため、通院しながら療養しました。

 そして、発症から1週間後、自宅で意識を失い、救急搬送されました。体温は34℃台まで低下。劇症型溶連菌による『敗血症』と診断されて、緊急手術となりました。

 その後、手術で右足を失い、義足での生活になり、社会復帰できたのは半年後でした。 感染経路は不明ですが、心当たりは右足にあったわずかな傷だということです。  実際に、東京女子医科大学の菊池教授が診察した60代の女性です。

 庭仕事中に植木鉢を足の甲に落としました。少し痛みがありましたが、出血や目立った傷はなく、整形外科で湿布をもらいました。

 2日後、足の甲が腫れ上がり、搬送されました。皮膚の一部が壊死して化膿していました。その後、10回以上にわたる皮膚移植をして、退院できたのは1年後でした。

 菊池教授が診察した80代の男性です。

 温泉旅行の際に、風呂場で転倒し、右の足先を打撲。ただ、出血や腫れはなく、医療機関は受診せず、翌朝帰宅しました。

 帰宅した日の夜、右足の甲から足首あたりまで腫れて、痛みを訴えて、搬送されました。意識障害や多臓器不全などがあり、処置を行いましたが次の日に亡くなりました。

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■感染経路、早期発見のポイントは?解説

 劇症型溶連菌の感染経路です。傷口から溶連菌が体深くに侵入し、急速に増殖します。 「水虫」「床ずれ」「靴ずれ」「深づめ」などからも感染します。

 さらに、鼻やのどの粘膜から侵入する飛沫感染や、接触感染もあります。 しかし、半数は、感染経路が不明です。  特にリスクが高いのは、『高齢者』と『妊婦』です。

 東京女子医科大学の菊池教授によると、「妊婦が菌を持っていると、出産をきっかけに、胎盤が出てきたところから感染する場合がある」ということです。

 『劇症型溶連菌』に、早期に気づくためのポイントです。

 菊池教授によると、「ぽつんとあった発疹や傷から、時間単位で腫れが数センチ拡大していたら可能性は高い。急に39℃以上の発熱があるのも特徴。発見時に患部を丸で囲んで変化を見たりするといい」ということです。

 『劇症型溶連菌かも』と思ったら、「すぐに救急車を呼んで救急外来へ。意識障害が出て、ぼーっとし始めてからでは危険。劇症型溶連菌は一刻を争うので、そうじゃなかった時のことより、そうだった時のことを優先してほしい」といいます。  治療法と予防法です。

 治療法は、ペニシリン系の抗生物質の投与、壊死部分の切除。予防法は、「傷口を清潔にする」「マスク、うがい」「手洗い、アルコール消毒」です。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月23日放送分より) この記事の写真を見る(23枚)
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