定年後に、いわゆる“5月病”になる人が続出しています。
■定年後の5月病「新社会人より深刻」
『定年後5月病』とは、定年後1カ月ほど経ち、意欲がなく無気力な状態や不安感、イライラなどの症状が目立ち出すことです。
元運転手の70代男性「定年後、仕事がなくイライラした。どこにも行く気になれず、友達と遊ぶことも考えられなかった」 60代女性
「夫は、定年直後に仕事を探したが、『こんな仕事しかない』とか言って、だんだんやる気なくなり、家にいるようになった」 精神科医の和田先生によると、「大きな環境の変化によって、5月ごろに心のバランスが崩れる。新社会人にも起こるが、定年を迎える人の方がより深刻」ということです。 次のページは ■半年くらい無気力に…定年後の「喪失」
■半年くらい無気力に…定年後の「喪失」
定年退職した人が、無気力になってしまう『定年後5月病』です。
具体的な症例一つ目、70代男性のAさんです。製造業の管理職をしていましたが、10年ほど前に定年退職し、その後、無気力が約半年続いたということです。
Aさんは、「定年退職した喪失感から、気力がなくなってしまった。家の中に閉じこもって何をするでもなく、半年ぐらいボケーッとしていた。人にも会いたくなかった」と話しています。 『定年後5月病』の特徴について、精神科医の和田先生によると、「毎日のルーティンや、自分の肩書がなくなることで空虚感が強くなったり、働いていない自分を許せなくなってしまう。勤め先がない状態は続くので、5月だけで終わらないケースが多い」ということです。 症例二つ目は、和田先生が診療した、60代男性のBさんです。大手企業の管理職を定年退職し、その後、無気力、食べても味がしない、夜中に何度も目を覚ます、徐々に体重減少などの症状が出たということです。 Bさんの定年後の変化です。定年前は、典型的な会社人間で無遅刻・無欠勤。身なりにも気を使っていましたが、定年後は全く外出せず、テレビを見て、一日中パジャマで過ごすようになったそうです。 和田先生の対応です。軽いうつ病の薬を処方し、栄養と外出の必要性を説明したところ、外に出るようになり、約1カ月で睡眠・食欲などが回復したそうです。 和田先生が考える『定年後5月病』の要因です。40代・50代くらいから、年を取るほど幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が減り、気分が沈みやすい状態になる。特に男性は、男性ホルモンの分泌も減り、意欲が低下しやすくなるということです。 さらに60代は、喪失するものが多い世代です。定年退職によって、居場所も人間関係も失います。 親の介護に多くを捧げるほど、親を亡くすと深い喪失感に襲われたりします。こうしたことが『定年後5月病』を発症するきっかけになります。 和田先生は、「『定年後5月病』による食欲低下や睡眠不足により、セロトニンが減少し、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ってしまうことも。早期発見・早期治療が重要」だということです。 次のページは ■夫の定年退職が妻のストレスになるケースも■夫の定年退職が妻のストレスになるケースも
夫の定年退職が妻のストレスとなることもあります。
60代女性「夫が家にいるのが邪魔。私は家事をしているのに、何もせずいられると腹が立つ。夫は家で何もせず、私がパートから帰ってご飯を作る」 70代女性
「夫は家で全く動かず、自宅警備員状態。家は自分の世界だったのに、イライラする。もう存在が嫌」 60代のCさんは、夫の定年退職から6カ月後に、ストレスからパニック障害になりました。
夫が常にそばにいるストレスや、夫が出掛ける際は必ず一緒に出掛けるため、自分の時間が無くなるストレスがあったということです。現在は別居していて、そのおかげで回復してきているそうです。
精神科医 和田先生「夫の言動がストレスとなり、妻の心身に不調をきたす『夫源病』というものがある。夫の定年後、24時間、夫婦が顔を突き合わせるようになると息が詰まるし、相手の嫌なところも目につきやすくなる」 (「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月17日放送分より) この記事の写真を見る(15枚)
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