能登半島地震で漁港がある一帯の地盤が隆起したことを受け、水産庁は16日、復旧・復興について話し合う初の会合を金沢市で開いた。船を出すのに十分な水深が確保できなくなるなか、本格的な復旧方法として、深さがある沖へと港を出す案などが議論された。7月をめどに支援策を取りまとめ、地元の漁業関係者らに選択肢として示すという。

 この日開かれた「漁業地域復旧・復興技術検討会」は地震工学や港湾工事の専門家ら6人で構成。石川県や県漁連の代表も同席し、非公開で約2時間話し合った。委員長に就いた東京海洋大副学長の岡安章夫教授が終了後、取材に応じた。

 今回の地震では、特に能登半島西側の「外浦」で海底が大きく隆起し海水面が下がっている。地震前の状態に戻しただけでは港の機能が回復しないとして、「これまでの災害復興になかった新しい課題だ」と指摘した。

 本復旧に向けては、鹿磯(かいそ)漁港(輪島市)のように最大4メートル隆起した場所から小規模なところまであるとして、隆起の程度を大中小でパターン分けして考える方針という。

 そのうえで、水深を確保できる沖へと港を出す「沖出し」のほか、海底を掘削・浚渫(しゅんせつ)して港を動かさず水深を確保する方法や、水深を確保できる沿岸部の別の場所に港を移動させる案などを示し、議論を深めていくことを明らかにした。複数の方法を組み合わせることも考えているという。検討会は選択肢を示すにとどめ、各漁港をどう復旧させるかは、県や地元の議論に委ねるとしている。7月までに今後2回の会合を予定している。

 県水産課によると、県内では23カ所(漁港22、港湾1)で隆起の被害を確認。仮復旧として、桟橋の設置や浚渫が輪島港などで進んでいる。

 石川県は3月に復旧・復興に向けた協議会を立ち上げており、5月8日には非公開で津波被害と地盤隆起の対策を議論する分科会を開催。今年度内に復旧・復興の方針をとりまとめるとしている。水産庁は、今回の会合で「あくまで復興に向けたアイデアを県や地元と共有する」としており、一部漁協から声が出ている港の集約化の議論を国から呼びかけることはないとしている。

 馳浩知事はこの日の会見で沖出しの実現性について問われ、「選択肢の一つとしか私は言えない」と述べた。(土井良典)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。