人の話を「要するに」でまとめない
「つまり、Aさんが言いたいのは、こういうことだよね」
「要するに、Bさんは○○すればいいんじゃない?」
雑談中にいちいち話の交通整理をしたがる人がいます。
よかれと思って親切に交通整理しているつもりかもしれませんが、これは絶対にやってはいけないルール違反です。
ウケるどころか、その場がシラケてしまいます。
自分の発言した内容を他者に「つまり」とか「要するに」などと要約されてしまうと、要約された側は、まるで自分が「話しベタでコミュニケーション能力の低い無能な人」と認定されたみたいで、立つ瀬がありません。
人の話を整理するということは、「伝えベタなAさんに代わって、理解力の低いみなさんに、賢い私が翻訳してお伝えいたしますね」と、上から目線で言っているのと同じことです。
たとえばサッカーで、Aさんが打ったシュートについて、「Aさんはシュートを外してしまったけれど、本当はこんなふうに打ちたかったんですよね、ほら」と、横から正しい見本を見せて得意になっているようなものです。
存在感を示すことも大切ですが、他者の話を整理する形で存在感を示すと、ウケるどころか、全員に嫌われます。
整理するなら、他人の話ではなく、自分の話にとどめておきましょう。
どうしても話の内容を再確認する必要があるなら、「今の話は、こういうこと?」と相手に尋ねましょう。
もちろん、仕事における会議などのシチュエーションでは、最後にいろいろな意見をまとめて決定する必要がありますが、それも会議のトップの任務です。
もし、あなたが会議のトップであれば、「今日の会議をまとめると、こういうことですね」などと締める権利があります。
でも、そうでないなら、トップが最終的にまとめるまで、交通整理するような発言はしないように心がけるのがウケる人の鉄則です。
「そもそも論」を言わない
「そもそも、○○にこだわる必要はないよね」
「そもそも、この計画自体にムリがあるんじゃない?」
すぐに話をまとめたがるのが、ウケない人の習慣ワースト2位だとしたら、ワースト1位は「相手の顔をつぶす」ことです。
たとえば、友人同士で旅行先や宿泊先を考えたり、恋人と休日の過ごし方について話しあったりするとき──。
複数人いれば、出てくるアイデアも千差万別ですが、アイデアには正解も不正解もありません。
どんなに自分と意見の相違があっても、他人の提案を「間違っている」とジャッジして相手の顔をつぶすのはマナー違反です。
なかでもやってはいけないのが、冒頭のように「“そもそも論”をぶち上げる」ことです。
たとえるなら、「このテーブルの上で、何を食べようか?」と話し合っているときに、「そもそも、こんなテーブルがあるのが間違っているんだ!」と、テーブルをひっくり返してしまうようなもの。
百歩譲ってコンセプト自体に難があったとしても、誰もその点を気にしていないなら、そのコンセプトありきで考えるのが筋です。
“そもそも論”をぶち上げると、それまでその話し合いに携わってきた人たちみんなが「間違っている」と全否定されることになります。
これは、会話に新しく入ってきたばかりの人や、自分が高学歴で人より優秀だと思っている人が陥りがちなミスです。
仕事のシチュエーションにおいても同じです。
会議にもいろいろありますが、コンセプトやテーマが既に決まっている場合は、その方向性でできるだけ多くのアイデアを出しあうのが会議の目的です。
どんなに期待のされる新人や優秀な人材でも、この“そもそも論”を口走ってしまうと、その会議に次から呼ばれなくなる可能性大です。
実際にそうした轍を踏んで、消えていった若い人や優秀な人を僕は今まで何人も見ています。
そもそも論をぶち上げる前に、会議に臨む大前提として、会議のメンバーをよく理解し、それまで積み上げられてきた仕事に敬意を払う必要があります。
会議でウケる人は、他者へのリスペクトを忘れません。
話を「少しでも短く」まとめる
話すのに慣れてきたら、次は「話す時間」を意識しましょう。ポイントは「できる限り短くまとめる」ことです。
「おはようございます」
朝のテレビ番組で司会者がにこやかにそうあいさつする時間は、いったい何秒ぐらいだと思いますか?
実は、1秒もかかりません。「9文字で約0.8秒」です。テレビ番組は、視聴者を飽きさせないようにテンポよく進行させる必要があるため、秒単位で動いています。
もし5秒でもズレたら大ごとです。次のコーナーで5秒縮めるように調整することで、バランスをとる必要が出てきます。
テレビ番組の台本は僕のような放送作家が書くわけですが、駆け出しの頃はいつも「文章が長い! 原稿は2行以上書くなっ!」と、先輩に怒られていました。
プロのアナウンサーさんやタレントさんは、台本をパッと見ただけでスラスラよどみなく話せますが、2行以上のセリフだとそうはいかないからです。
テレビの原稿は、上は絵コンテのスペース、下がナレーションやセリフの台本です。よほど重厚なドキュメンタリー番組のナレーションでもない限り、人が会話するセリフは「2行が限界」というのが業界の常識です。
テレビの原稿の1行は15文字なので、2行なら30文字です。
広告や雑誌などのキャッチコピーも、30字前後が適量とされています。
短歌も5・7・5・7・7で合計31文字です。
テレビでは、30字のセリフを、3~5秒ほどでしゃべります。そのボリューム感とスピード感が、ワンフレーズとして収まりがいいからです。
話が短く簡潔になるほど、スッと伝わりやすくなるので、僕が若い頃は「1行でも1秒でも短く書け」とよく言われました。
「5秒で話すクセ」をつけよう!
テレビのように、「5秒ワンフレーズ」でできるだけ短く簡潔に話すことは、会議で発言したり、プレゼンで話したりするときにも役に立ちます。
もちろん、早口で話せということではありませんが、「何が・どうした」という骨子となる主語と述語をベースに話を肉付けすると、話が簡潔にまとまりやすくなります。
そうすると、「この人の話はスッと耳に入ってきて、わかりやすい。安心して聞けるな」という印象になります。
相手にウケる話をするためには、このわかりやすさが欠かせないのです。
『「おもしろい!」と思われる話し方のコツ: 一瞬で心をつかむ その場が盛り上がる』(三笠書房)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプしますちなみに、お笑い芸人さんたちは台本通りに話さず、独自のアレンジを加えてきます。
たとえば動物についてトークする番組で、台本に「この前、猫がいるカフェに行ったらね」と書いてあったとすると、「オレの行きつけの店なんて、いつも香ばしい鳥がいっぱいいてさ」「それただの焼き鳥屋じゃん!」などといじるわけです。
話しているテーマの範囲内で、時々そうした独自のアレンジが入れられるようになると、話が盛り上がりやすくなります。
話を短く簡潔にまとめるなかで、臨機応変にアレンジを加えることで、わかりやすいなかにもスパイスの効いた、相手を飽きさせないトークを展開できます。
ぜひ普段から、5秒で話せる話題は何か、探して実践しましょう。
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