山形県米沢市の九里学園高校が、リニューアルによって不用になった制服の生地を使い、来客用のスリッパに生まれ変わらせた。廃棄されるものに新たな付加価値をつけて商品化するアップサイクルの取り組みだ。

 校内で制服リニューアルを担当した高木ユキエ教諭(56)によると、同校は冬服の制服のデザインを2023年4月に一新。紺色のブレザーが、グレーに変わった。

 同校では、制服のサイズが合わなくなったり破損したりした生徒用にと、制服バンクを設けて卒業生に不用になった制服の寄付を呼びかけている。しかし、旧制服を着用する3年生が来年3月に卒業すると紺色の制服の着用者がいないため、約50着あった制服の活用法を考えていた。

 新しい冬服を製作したオンワードコーポレートデザイン(東京)の担当者に相談すると、紹介されたのが河北町のスリッパ製造業者「後藤」だ。

 河北町はスリッパ生産量全国一を誇る。後藤では22年に、オンワードコーポレートデザインとANAホールディングスとの企画で、航空機の座席カバーをスリッパにアップサイクルした実績があった。

 7月に試作をしてもらい、工場も見学してスリッパ製造の工程も説明を受けた。今回は50足分で、10月31日に納品された。

 できあがったスリッパには、新しい制服に採用された学校のエンブレムもあしらわれている。教諭たちからは「履き心地が良い」などと好評だった。高木教諭は「とても良いスリッパに作りかえていただいた。手作りの確かな技術で、信頼されている企業だと思った」と話す。

 まだ紺色の制服が残っているので、今後もお願いする予定だ。卒業生が来校した時には、制服の生地でできたことを教えてあげたいという。

 一方、後藤の後藤重美社長(67)は、「生地がしっかりしていたので長く履ける。来客や卒業生に履いてもらえれば社会貢献になる」と話す。妻で専務の和子さん(65)も「ふだん使っている生地と違うものからスリッパができるのはおもしろい。県内の高校だったので、身近に感じる社員もいた」という。

 同社は今年夏にホームページ(https://www.e-kigyo.jp/gotoslipper/)をリニューアルし、持ち込んだ生地でのスリッパ製造やオーダーメイドも載せたところ、問い合わせが増えているという。(大谷秀幸)

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