宮城県名取市立中学校の3年生だった少年(15)が昨年12月、いじめを苦に自殺未遂をしたとされる問題で、名取市教育委員会は28日、第三者委員会のメンバーを一新して調査をやり直すことを明らかにした。不信感を訴えていた母親の申し入れに応じた。治療を続けていた少年が今月亡くなっていたこともわかった。

 少年は自閉症があり、特別支援学級に在籍しながら普通学級でも授業を受けていた。母親らによると、1年生の頃から同学年の生徒に「自分のクラスに帰れ」「死ね」と言われるなどしていたという。昨年12月に学校で自殺を図って脳挫傷の大けがを負い、後遺症の治療を続けていたが、8月11日、自宅で急性循環不全で亡くなった。

 市教委は自殺未遂の事案の後、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態として、専門家10人からなる第三者委を設けて調査を開始。だが「当事者の心情に配慮する」として、少年や保護者に聞き取りをしていなかった。このことに母親が不信感を持ち、今年7月中旬、調査やり直しなどを申し入れた。

 市教委は同31日、「調査の進め方や説明が不十分だった」と母親側に謝罪。8月22日に第三者委を開き、委員らの「当事者との信頼関係なしでは調査は難しい」との意見も踏まえて、委員入れ替えとやり直しを決めた。22日の時点で市教委は少年死亡の事実を把握しており、委員にも知らせたという。

 母親の代理人の弁護士は取材に「調査をやり直すのは評価する」とした。母親は「子どもが生きているうちに、事情を聴いてほしかった」と話しているという。

 名取市の滝沢信雄教育長は、28日の市の定例会見で経緯を説明。「本人から聞き取りができなくなったことは心苦しく、申し訳ない」とした。

 これまでの市教委や学校の調査では、中学1年の時から悪口を言われたり、避けられたりといったいじめが数件あったことを確認したという。今後、母親らの意向も聞いて新たな第三者委を人選し、自殺未遂に至った背景や再発防止策を調査・検討する。(石橋英昭)

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